2015 Fiscal Year Research-status Report
小児がん救急の実態と看護師の臨床判断―生涯教育プログラム作成を目的とした基礎調査
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15K11696
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
前田 留美 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 特任講師 (60341971)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小児がん / がん救急看護 / 看護師 / 臨床判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は日本の小児がん救急看護の現状を明らかにするため文献検討を行い、米国小児がん看護協会(APHON)に参加して米国の現状について情報収集を行った。 文献検討は2000年~2015年5月までに国内外で発表された文献を対象とし、和文献は「小児がん 救急」英文献は「Oncologic Emergency」と「pediatric」または「child」を検索語としてヒットした文献のうち、和文献42編、英文献13編を対象として行った。小児がん救急の症例数は10年間で10~20例程度の施設が多く、看護師が小児がん救急患者に接する機会は限られているにもかかわらず、救急時の対応、家族への対応にも配慮が求められるため、現任教育において系統立った学習機会を設ける必要があることが示唆された。 次に米国の小児がん救急看護の現状について、米国でも日本と同様に症例数は10年間で10~20例という施設が多く、緊急性が高いにもかかわらず個々の看護師が経験する機会が乏しいことが問題視されていた。米国ではCPHON(小児血液腫瘍看護専門看護師)という上級実践看護師資格があるが、全ての施設に勤務している訳ではないため、施設単位・地域単位での現任教育の実施は困難であることがわかった。このためAPHONは小児がん救急看護に関する現任教育のコア・カリキュラムを定めており、全米の小児がん治療施設は全てこのコア・カリキュラムを導入する方向となっていることがわかった。 また看護師の臨床判断については、筆者の前年度から継続している造血幹細胞移植後の患者の皮膚GVHDについての臨床判断のプロセスと関連要因を明らかにする研究を参考にする予定であり、現在質問紙調査を終え、統計解析とプロセスの質的分析に取り組んでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、2015年度は1)国内外の小児がん救急事例の系統的文献検討、2)海外の小児がん救急看護ガイドライン・教育プログラムの収集・分析を行い、日本・諸外国における小児がん救急および看護の実態、ガイドラインの整備状況、教育プログラムの内容分析を行い、小児がん救急看護の実態および教育体制を明らかにする予定であった。 文献検討は2000年~2015年度に国内外で発表された小児がん救急事例の文献検討を行った結果、小児がん救急に至る患者は「呼吸困難」「腹痛」「神経症状」を初発症状とすることが多く、これらの症状を訴える患者はがん救急の可能性があることを視野に入れて観察を行う必要がある事が明らかになった。また、日本では小児がん救急そのものがさほど知られておらず、症例数も少ないため、看護基準や教育プログラム等は未だ存在していないことが明らかになった。 次に海外の小児がん救急看護ガイドライン・教育プログラムの分析は、APHON、ONS(米国がん看護学会)のガイドライン、教育プログラムを収集し、内容の分析を行っている。特にAPHONのコア・カリキュラムは、米国ならびにカナダの一部地域にある小児がん患者の治療を行う施設全てが導入を求められていることが分かった。 以上より、日本の小児がん救急看護教育は、APHONのコア・カリキュラムを参考にして病態生理、看護について専門知識を習得し、呼吸困難・腹痛・神経症状を主訴とする患者のシミュレーション教育を行う教育プログラムが求められると考えられた。本研究は、当初計画どおりに順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
APHONでの情報収集により、全米の小児がん治療施設ではAPHONのコア・カリキュラムを導入する方向になっており、施設独自の教育プログラムは少なくなるだろうと予測された。当初計画では2016年度は米国の小児がん治療施設を見学し、小児がん救急事例、教育体制、課題等についてヒアリングを計画していたが、まずはAPHONから得られる資料を十分検討し、その上で独自の取組を行っている施設について情報収集を行い、施設の看護教育担当者等にヒアリングを行う事が望ましいと考えるに至った。 このため予定していた米国でのヒアリングは中止し、代わって分析を進めている看護師の臨床判断について国際学会(国際がん看護学会、2016年9月 香港で開催)で発表し、論文を英文誌に投稿する方向で計画を変更したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度は予測していた謝金、人件費の発生がなかったため、経費の余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は小児がん救急についてのインタビュー調査を予定しており、その謝金と、英文誌投稿のための校正料等に充当したいと考えている。
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Research Products
(1 results)