2016 Fiscal Year Research-status Report
分娩後尿失禁の慢性化予防を目的とした母子で行う形態学的エビデンスに基づく運動
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15K11721
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
長島 玲子 島根県立大学, 看護学部, 教授 (00310805)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大殿筋収縮訓練 / 骨盤底筋訓練 / 腹圧性尿失禁予防 / 産褥女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分娩後尿失禁の慢性化を予防するために、産後の骨盤底筋収縮の感覚がない母親でも簡便に骨盤底を強化できる、形態学的エビデンスに基づいた運動を考案する。さらに、考案した運動が尿失禁の予防や改善に有効であることを、臨床症状とMR画像により形態学的に検証することを目的とする。そこで、先ず、大殿筋収縮が容易に確認できる骨盤底筋訓練になり得るかどうかを検討するために、膀胱頚部が大殿筋と骨盤底筋の収縮時に相関して動くかどうかを検証することに着手した。 研究方法は、既に我々が先行研究において得た骨盤底の支持力を示す指標、すなわち膀胱頚部の基準線からの拳上、仙骨からの前方への動きをMRIで観察した。24例の女性被験者(未産婦3例、初産婦21例、年齢 29.5±4.5歳)に対して、シネMRIにより、正中矢状断像を毎秒撮像し、安静時、大殿筋収縮時及び骨盤底筋収縮時における膀胱頚部の基準線からの高さと仙骨からの位置を測定して比較した。大殿筋収縮時及び骨盤底筋収縮時における膀胱頚部の高さと位置及び膀胱頚部の高さと位置の10秒間の持続状況、大殿筋収縮時と骨盤底筋収縮時との間の相関性を統計的に解析した。 その結果、大殿筋収縮時にも骨盤底筋収縮時にも膀胱頚部は有意に上方へ移動し、前方へも移動する傾向が認められた。また、大殿筋及び骨盤底筋収縮時の膀胱頚部の動きの間に高い相関が認められた。さらに、大殿筋及び骨盤底筋収縮10秒間における膀胱頚部の持続性には高い分布の一様性が認められた。このことから、大殿筋を収縮させる方法は、確認が容易な骨盤底筋訓練になる可能性が示唆された。今回開発した運動は、尿失禁の発症の予防や改善に有効であることを形態学的に検証することができると考える。この結果は、健康長寿を目指すわが国において、質の高いヘルスケアを提供し、女性のQOLを高めることに貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象者の産褥月数を変更することとした。研究計画書作成時点では、対象者の訓練開始時期を産後 1か月から 4か月と設定していたが、訓練の開始時期を産後 4か月からとし、訓練終了を産後 6か月にした。 理由は妊娠や分娩を契機に発症する腹圧性尿失禁は、産後 3か月の間に自然に改善するケースがあり、産後 3か月以降継続する尿失禁は永続するとの報告がある。そのため、殿筋収縮訓練の有効性をより確実に立証するために、産後 3か月以上経過して腹圧性尿失禁を自覚している女性を対象とすることとした。研究対象者の設定を変更するにあたり、研究倫理審査の申請や対象者募集方法の変更が生じたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
分娩後尿失禁を有する母親を対象に、平成28年度までのところで選定した殿筋収縮訓練を産後4か月から6か月まで実施し、尿失禁症状の改善の有無と膀胱頚部の位置変化を中心に以下の視点で検討し、運動の有効性を検証する。 ①尿失禁症状の種類や程度について、ICIQ-SF(国際共通の尿失禁症状・QOL評価質問票)で評価する。必要時パッドテスト(国際尿禁制学会)を用い尿失禁の改善度を調査する。②MRI撮影を1か月おきに3回実施し、膀胱頚部の基準線からの位置と仙骨からの距離を測定し、初期値や指標と比較し評価する。③運動に対する難易度の評価については、選定した運動に関する困難さや容易さを質問紙で調査する。 上記の①~③について運動の継続と尿失禁症状及び膀胱頚部の位置変化の関係、分娩様式との関係を分析し、選定した運動の尿失禁予防に対する有効性を科学的に証明する。これらの成果を取りまとめ学会及び論文にして発表する。
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Causes of Carryover |
平成28年度には簡便で骨盤底を特に自覚しなくても実行可能な形態学的エビデンスに基づいた運動を考案し、次に、腹圧性尿失禁を有する褥婦に、考案選定した運動を一部実施する予定であった。しかし、平成28年度では、運動の考案と選定までしかできなかったため予算の繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は考案した運動を腹圧性尿失禁を有する褥婦20名に実施し、有効性を立証する。20名の褥婦に各4回のMRI撮影を行う予定である。
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Research Products
(3 results)