2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔機能を維持・向上する口腔ケアの標準化と効果の検討
Project/Area Number |
15K11746
|
Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
大内 潤子 北海道科学大学, 保健医療学部, 講師 (00571085)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 裕子 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40336409)
福良 薫 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (30299713)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 口腔機能 / 摂食嚥下 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,黒岩(2010)に基づき,医療機関において看護師の日常業務として実行可能な標準化プロトコルを作成し,セルフケアが困難な入院中の高齢者を対象に,それを実施することで口腔機能が維持・向上するかどうか,介入効果を検討することを目的としている。平成28年度は,黒岩(2010)に基づく口腔ケアを実施している複数の医療機関において,実際の場面を観察し,平成27年度に実施した質問紙調査の結果と合わせて,口腔ケアの実施状況についてデータを得る予定であった。しかしながら,調査対象の医療機関との調整がつかず,予備調査に終わり,本調査は平成29年度に持ち越しとなった。そのため,今後,入院中の高齢者を対象として口腔ケアの効果を評価することを視野に入れて,まずは地域で暮らす元気な高齢者を対象に口腔機能を評価した。調査は8月と3月に実施した。そのうち,8月に実施した調査には,77名(男性30名,女性47名,平均年齢72.8±5.1歳)の65歳以上の高齢者が参加した。口腔機能は,現在歯数,機能歯数,/pa/,/ta/,/ka/の1秒間あたりの発音回数で示すオーラルディアドコキネシス(ODK),ガムによる咀嚼力によって評価した。口腔機能に影響を与える要因を検討するために,これらの指標と世帯構成,医療機関・歯科への受診頻度,外出頻度や散歩の習慣など10項目との関連を検討した。その結果,歯科の受診頻度が多いほうが咀嚼力を維持している傾向がみられた。また,ODKと定期受診をしている医療機関数および,機能歯数と入院回数の間に負の関連がみられた。このことから,地域在住の自立した高齢者のなかでも健康状態に問題を抱えた高齢者は,口腔機能が低下している可能性が示唆された。入院中の高齢者を対象とした,今後の調査においては,これらの要因を考慮に入れる必要がある。なお,3月に実施した調査のデータは現在分析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は,黒岩(2010)に基づく口腔ケアを実施している複数の医療機関において,実際の場面を観察し,平成27年度に実施した質問紙調査の結果と合わせて,口腔ケアの実施状況について全体像を把握する予定であった。しかしながら,研究者と調査協力医療機関との調整がつかず,予備調査にとどまり本調査を実施するに至らなかった。 一方で,生活機能が低下した入院中の高齢者の口腔機能の評価に先立ち,元気な高齢者を対象に口腔機能を実際に評価し,方法論的な課題や元気な高齢者における口腔機能の傾向やそれに関連する要因を知ることができた。よって,総合的には「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,口腔ケアの標準プロトコルを作成し,それを臨床で評価することが重要になってくる。そのため,今年度は,複数の医療機関との連携をさらに図り,各機関の状況に合わせて柔軟に対応しながら,まずは黒岩(2010)による口腔機能の実施状況について観察調査を実施し,それをもとに標準プロトコルを作成する予定である。その過程には,当該口腔ケアの提唱者である黒岩恭子氏に研究協力者として参加していただき,データの解釈やプロトコルの作成に関して助言を頂くことになっている。 それと同時に,その後の臨床の場における口腔ケアの実施と評価のために,医療機関と介入方法および評価方法について検討し,次のフェーズにスムーズに移行できるように準備を整えていく。また,当該口腔ケアの実施と評価には,技術そのものや個人的要因のほかに組織的な要因が関わってくることから,コミュニティ心理学の知見を活かすため,その分野の研究者にも助言・協力を得ていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,日本の複数箇所で観察調査を実施する予定であったのが,調査協力医療機関との調整がつかず本調査が実施できなかったことから,そのための旅費や機器購入等の費用が未使用となったためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,日本の複数地域における当該口腔ケアの実施状況に関する観察調査および,口腔ケアの標準プロトコル作成とその評価のための研究協力者や医療機関との会議等に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)