2017 Fiscal Year Research-status Report
部位別体動の検知に基づく認知症高齢者の起上り予測法の確立と次世代見守り装置の開発
Project/Area Number |
15K11773
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
川上 勝 自治医科大学, 看護学部, 准教授 (50382958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 功一 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60282381)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機械学習 / 体動検知 / 転倒転落 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、臥床者体動情報を活用した機械学習を活用し、認知症等により安全確保に課題のある高齢者のベッドサイドでの転倒や転落事故を未然に防ぐための装置(以下見守り装置)を開発することである。 高齢者は、一般的に眠りが浅く、中途覚醒や早期覚醒を起こしやすい。また、認知機能や身体機能が低下した高齢者の場合,夜間の中途覚醒に続く離床は,ベッド周囲での転倒やベッドからの転落の原因になる。高齢者の転倒・転落によって引き起こされる骨折等の外傷や入院等による安静や生活環境の変化によって、高齢者の日常生活動作に多大な影響を及ぼす。したがって、転倒転落時の予防は喫緊の課題である。そこで、高齢者ケアの現場では,転倒・転落事故予防のため,ケアスタッフによる見守りケアが重点的に行われている。特に、夜勤業務を担当するケアスタッフは,限られた人数で見守りケアと排泄や移動の介助を同時に対応することになる。その結果,夜勤業務におけるケアスタッフの心理的身体的負担が問題となっている。 このような状況を改善するために、本研究ではケアスタッフが見守り対象者の離床前動作(起上り)を把握し通知する機能を備えた見守り装置の開発を目指している。高齢者ケア場面で普及している見守り装置は、見守り対象者の起上りや離床を通知できるが、起上り前の体動は感知できない。 平成28年までに介護老人保健施設において6か月以上連続稼働可能な臥床者体動検知システムの開発が完了した。また、平成29年度には、認知症高齢者を対象として臥床中の体動情報から機械学習によって起上りと離床の判定手法を確立できた。その結果、閾値設定が不要な見守り装置が実現可能となる。また、学習器を用いることで起上り前の体動が判定可能であることが確認できた。今後、提案手法の社会実装を目指し、学習器の性能向上と判定結果の通知システムの確立と、試験運用によりシステムを評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度までに、独自に開発したアルミパネルにひずみゲージを配置したセンサパネル(以下、体動検知パネル)の製作と比較的入手が容易な携帯端末や汎用電子基板を用いた臥床者体動測定及びデータ収集装置(以下、体動測定・記録装置)の製作が完了した。体動検知パネル及び体動測定・記録装置の耐久性や信頼性については実験室環境だけでなく介護老人保健施設での実証実験を通して確認できた。また、体動検知パネルで得られたデータの蓄積、サーバへの転送に必要な装置臥床者の体動情報の蓄積とそれを用いた姿勢判定アルゴリズムについても、一部改良や検討課題があるがほぼ完成した。 平成29年度は上記装置やシステムを用いて、介護老人保健施設で生活する高齢者を対象に年間を通してデータ収集を実施した。これらのデータを深層学習のアルゴリズムを用い た分析手法を検討した結果、対象者個々に対応した臥床姿勢を判別できることが確認できた。さらに、深層学習により臥床時体動から起上りの予備動作の特徴を抽出するためのプログラムも試作できた。さらに、見守り対象者の体動に関するデータ収集や臥床時姿勢判定や起上り予測、判定・予測結果の通知をクラウド上で統合するための要素技術は確立できた。 体動検知パネルや関連する装置、ソフトウエアの製作や管理は全て手作業で対応しているため、複数のシステムを同時に稼働することが困難な状況である。また、実証実験を実験室以外で行っている場合は保守点検に時間を要する等の課題はある。しかし、介護老人保健施設でのデータ収集は、施設担当者や各フロアスタッフの協力のもと実施できる環境であり、今後も継続できると言える。また、臥床者の体動情報から起上り前動作の検知を可能とするアルゴリズムの基本設計が完成している。このアルゴリズムの検証により提案システムの機能向上が期待できる。よって、本研究はほぼ順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、臥床者の体動情報から起上り前の体動を判別し、起上り予測が可能なプログラムを実装したシステムを完成させる。さらに、高齢者施設において、見守り対象者の夜間臥床時体動情報から起上り予測が実際に実現できるかを検証する。在宅療養場面における実証実験を実現するために体制を整えたり、対象者への依頼や関連する手続きを進める。 また、これまでに確立できた体動に関するデータ収集や臥床時姿勢判定の通知をクラウド上で統合する装置や表示・操作のためのインタフェースを活用し、高齢者施設のスタッフへのヒアリング等を通してシステム運用上の課題を明確化する。一方、高齢者施設における実証実験を効率的に進めるために、装置やセンサの機能や品質を高める。具体的には、体動検知パネルの製品化に向けて、基本特許を基本としながら起歪材や部材等の部品の素材やデザインを目指す。装置類についても各種基板用の筐体のデザイン性や耐久性を高めるために再設計を進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 今年度は検知パネル等のシステムを構成する装置の改良と高齢者施設での実証実験に基づく学習器の開発に取り組んだ。また、数か月分の夜間臥床データの整理や分析のために時間を要した。ただし、高齢者施設における実証実験における対象者数の確保が十分でなかった。さらに、システムの保守管理、装置等の修理が必要となり、データ収集が中断することがあった。そのため、研究成果を発表・報告するための予算を執行できなかった。 (使用計画) 実証実験を継続するため、システムを構成する各装置の作成と管理に加え、研究成果を発表するための学会参加費および印刷費として研究費を使用する。
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Research Products
(2 results)