2015 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症をもつ人の就労と生活との調和を目指した看護援助モデルの開発
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15K11800
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中戸川 早苗 愛知県立大学, 看護学部, 助教 (60514726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 信夫 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (40232673)
岩崎 弥生 千葉大学, 看護学研究科, 教授 (60232667)
眞嶋 朋子 千葉大学, 看護学研究科, 教授 (50241112)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 就労支援 / 就労と生活との調和 / 看護支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究の目的は、統合失調症をもつ人の就労と生活との調和の構築過程を明らかにし、その過程を支援する看護実践への示唆を得ることとした。研究結果は学術誌に投稿し、統合失調症をもつ人の就労と生活との調和を目指した看護援助モデル開発に向けた基盤モデルとなることを目指した。 就労支援施設での参加観察及び半構造的面接を行い、統合失調症をもつ人の就労と生活との調和の構築過程について対象者12名より収集したデータを修正版グランデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した。生成された概念は34概念で、そのうち29概念から意味内容の同類性において7カテゴリーが生成された。残り5概念はカテゴリーと同等の説明力を持つ概念であった。これらを総括するコアカテゴリーを1つ生成した。 対象者の統合失調症をもつ人の就労と生活との調和の構築過程は『働くことにより希望を実現させていくという生き方を追究する繰り返しの試み』をコアカテゴリーとする過程であった。この過程は、統合失調症を患いながら自分と向き合う日々の生活の中で≪現状から抜け出すことへの強い希求≫を抱くことから始まり就労へと結び付いていた。しかし、【精神症状をもちながら働いて生きることとの格闘】を体験し職業生活の中で自分を保つことは難しく、【酷い疲れ】に襲われ、時に<心身追い込まれ命を絶ちたいと思うほどの苦悶>にまで追い込まれていた。この状況の調和を保つために、【病気と共に生きて掴んだ生き方の秘訣の構築化】が【酷い疲れ】を繰り返し打ち砕くように作用していた。この過程が上手く作動できるよう、希望の実現に向けて努力を重ねて行くことを支援することが重要であると示唆された。 本研究は、学術誌に原著論文として掲載が決定したことから、この研究における結果図が、看護援助モデル開発に向けた基盤モデルとして今後の研究に活かせることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究計画・方法を7段階に分けて明示し実施している。今年度は、7段階のうち2段階までを実施予定とし、【ステップ1(平成27年4月~10月):面接調査により統合失調症をもつ人の地域生活上の就労に関する課題を抽出する】と【ステップ2(平成27年11月~平成28年3月):当事者を取り巻く人的支援環境の体験を捉えたうえで、就労を支える看護師の援助・課題を抽出する】を実施し終了させた。 さらに、上記研究結果をまとめ学術誌に投稿し、原著論文として掲載が決定したことから、今年度の研究成果を次年度以降の研究におけるモデル作成の基盤として繋げることができたと評価し、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、研究計画・方法の7段階のうち以下に示す3段階から5段階の途中までを実施予定とし、研究を進めていく。 【ステップ3(平成28年4月~6月):文献検討による就労を支える看護援助の要点抽出】 ≪方法≫統合失調症をもつ人の就労支援に焦点をあてた看護学領域での先行研究は少ないため「統合失調症をもつ人の地域生活、セルフケアへの援助、リカバリーに関連する先行研究」などを加え、これらを基に検討し、得られた知見を統合して、看護援助の要点を抽出する。 【ステップ4(平成28年6月~平成29年1月):仮説モデルの考案】≪方法≫ステップ1、2で得られた結果とステップ3で得られた結果をもとに「統合失調症をもつ人の就労と生活との調和を目指した看護援助モデル構築の素案」作成を行う。*研究者間で討議を重ねる。討議の回数に関しては、必要に応じて研究者間で調整する 【ステップ5(平成29年2月~8月):仮説モデルを用いて看護を実践】≪方法≫仮説モデルの援助指針に基づいて研究代表者が個別の看護を提供する。具体的には、対象施設は、2~3カ所の精神科デイケアやACTなど看護師のいる就労支援施設で、各施設の倫理審査を受け実施する。研究対象者は、統合失調症をもつ人で、就労に挑戦したいと考えている人、あるいは就労して1ヶ月以内の人。また、研究の趣旨を説明し参加の同意の得られる者とする。人数は5名程度。各対象に対して仮説モデルの援助指針に基づいて、一回一時間以内、週1~2回、就労先を探す活動から対象の希望する就労先(福祉的就労施設、アルバイトも含む一般就労)への就職後を含めて4~6ヶ月間、研究代表者が就労と生活との調和を目指した看護援助を個別に提供する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、面接調査により統合失調症をもつ人の地域生活上の就労に関する課題の抽出と看護援助に関する示唆を得ることを目標に研究に取り組んだ。 上記目標の内、看護援助への示唆を得るため、ACTなどを訪問し地域支援を実践している看護スタッフへの面接調査を計画していたが、統合失調症をもつ人への面接調査を参加観察を実施しながら行ったところ、看護援助への示唆に結び付く豊富なデータを得ることができた。この段階で、次に行う介入研究に必要な援助モデルの基盤として位置づけられるモデルの作成が可能であると判断し、これまでの結果を論文にまとめ、援助モデルの基盤となるモデルを完成させた。そのため、平成27年度予定していたACT訪問を実施しなかった結果から、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度、予定していたACT訪問を実施しなかった結果から、次年度使用額が生じたが、援助モデルの基盤となるモデルから援助指針の作成を行う際に、ACT等で働き就労支援に関わったことのある看護スタッフに援助指針の実施可能性に関する検討を求める必要上、今年度、ACT訪問に必要な旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)