2015 Fiscal Year Research-status Report
ナラティヴ・エシックスに基づく精神看護倫理教育方法の開発と効果の検証
Project/Area Number |
15K11823
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
田中 美恵子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (10171802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 由紀 東京女子医科大学, 看護学部, 准教授 (00307654) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナラティヴ / 看護倫理 / 精神看護 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、さまざまな人々がそれぞれに固有のナラティヴ(物語)を持ち、それらのナラティヴが相互に行き交う中で倫理的問題の解決が導かれるとするナラティヴ・エシックスの観点から、精神科臨床における倫理的問題を探求し、看護師らが経験する倫理的問題のナラティヴと、精神障害者のナラティヴとを羅生門的に複合させることで、看護師らの倫理的感受性を高めるためのナラティヴ・エシックスに基づく精神看護倫理教育の方法を開発し、その効果を検証することである。 本年度の研究実施計画は、1.ナラティヴ・エシックスの方法について、ナラティヴ・エシックスの関連の文献、患者のストーリーを重視する点でナラティヴ・エシックスと同一線上にある医療人文学の知見、タイダルモデルに関する文献も含め、広く文献検討を行い、この分野の動向を把握するとともに、研究の焦点・方法を精緻化し、ナラティヴ・エシックスの臨床への応用方法について明らかにする。2.精神科病院に勤務する看護師20名を対象に、倫理的問題についてのナラティヴを収集し、Reissmanのテーマ分析の手法によりナラティヴ分析を行い、倫理的ナラティヴのモデル事例を複数構築するとした。 研究者らは月1回程度の会議を行い、ナラティヴ・エシックスに関して、医療倫理学や看護倫理学などの観点から国内外の文献検討を行った。 その後、研究目的を精神科病院に勤務する看護師が体験する倫理的問題についてのナラティヴを収集し、その共通要素とヴァリエーションを明らかにすることを通して、精神看護の倫理的ナラティヴのモデル事例を複数構築することとした研究計画書を作成し、本学倫理委員会に申請を行い承認された。研究者らのネットワークを通じて、協力を得られた精神科病院や病棟で勤務経験のある看護師にインタビュー調査を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ナラティヴ・エシックスに関する文献検討は予定通り遂行している。 精神科病院や病棟で勤務経験のある看護師を対象としたインタビュー調査や分析については、研究計画書の作成、倫理委員会での審査に時間を要し、インタビュー調査の開始が予定より遅れたため、現在、インタビュー調査中であり、分析を同時に進めているがモデル事例の構築まで至っておらず遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①精神科病院や病棟で勤務経験のある看護師を対象としたインタビュー調査のナラティヴ分析を行い、倫理的ナラティヴのモデル事例を複数構築する。 ②精神障害者を経験した人々の手記、当事者の経験に関する研究等を収集し、精神障害者の経験を倫理的な観点から分析し、看護師の倫理的感受性を高めるための精神看護の倫理教育に活用するために類型化する。 ③精神障害を有する人の「声」に耳を傾け、その人が自らの物語を再生し、人生を取り戻すのを手助けすることをケアの方法とする「タイダルモデル」について、視察・研修を通して理解を深める。 ④①②③を総合することで、当事者とのパートナーシップとケアの倫理に基づく、精神科看護師のためのナラティヴ・エシックスの倫理教育の枠組みを考案し、内容を構成する。 ⑤研究者らがこれまでに開発した「精神科看護師が体験する倫理的問題の頻度と悩む程度」の質問紙をさらに精錬させる。
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Causes of Carryover |
精神科病院や病棟で勤務経験のある看護師を対象としたインタビュー調査の遂行が遅れ、データ処理にともなう費用が支出できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①ナラティヴ分析を遂行するためデータ処理に使用する。 ②当事者の手記や経験に関する文献検討に使用する。 ③タイダルモデルの視察・研修に使用する。
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