2017 Fiscal Year Research-status Report
多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデルの構築
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15K11828
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Research Institution | Toyohashi Sozo University |
Principal Investigator |
蒔田 寛子 豊橋創造大学, 保健医療学部, 教授 (10550254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠本 泰士 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (60710465)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 在宅ケア / 多職種連携 / 観察 / 役割 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、在宅療養生活を支援している多職種間の相互理解に基づく、在宅療養者の安定した生活継続のために有用な「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル」を構築することである。 現状把握のため、専門職への面接調査によるデータから質的分析を行い、結果は論文として報告している。専門職の観察の視点では、訪問看護師は病状悪化等療養生活が困難になる状況について、予測的対応ができるよう兆候・症状を落ちなく観察、リハビリ職はADLに注目して生活を観察、介護職は生活の変化に注目して観察、栄養士は病気をふまえて食事栄養を観察しているところに職種の特徴による違いが確認できた。また、在宅ケアに共通する観察の視点として、“病気をふまえた健康状態”“いつもと違う感じ”“日常生活”の3つが見出された。 上記現状把握を踏まえ実施したデルファイ法による質問紙調査は、2回目の調査で意見の一致率の高い項目を絞ることができたため、終了とし分析を進めている。まず1回目の質問紙調査の結果をふまえた取組だが、論文として報告している。要介護高齢者、認知症高齢者、終末期の対象者、神経系難病患者への支援について各職種の役割の認識の違いについて分析し、それぞれの職種が自ら担うと認識している役割を確認した。更にこの調査結果は、訪問看護師の役割に着目し、対象の特徴と日常生活援助の項目について分析を行い報告したいと考えている。 2回目の質問紙調査終了後の結果についてである。一致率の高い項目をみると、訪問看護師はジェネラリスト的傾向をもち、リハビリ職は在宅医療支援の項目が少なく、ADLに関する項目が多かった。栄養士は食事栄養に関することに役割が集中し、介護職は日常生活援助に関する項目が多かったという特徴を確認している。分析を更に詳細にすすめ、質的研究の結果とあわせ、「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル」を作成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度実施の面接調査のデータから質的分析を行い、その結果をふまえ、デルファイ法による質問紙調査の項目を抽出し、平成28年度に1回目の質問紙調査を実施している。調査項目の抽出には、研究分担者、連携研究者との調査項目の検討とプレテストの実施などを丁寧に行い、予定よりも多くの時間がかかり、1回目の調査開始時期が遅れた。更に質問紙の回収率が低かったため、再度調査協力者へ依頼文書を送付するなどしていたため、大幅に遅れている。2回目の質問紙調査を平成29年度に実施し、その結果の分析を現在行いながら、今までの結果を論文投稿、発表できるように整理しているところである。研究分担者、連携研究者と結果の分析について会議を行いながら進めているが、予定通り会議を開催することが難しく、これも遅れてしまっている原因である。しかし、調査結果は適宜報告するように取組んでおり、平成27年度の質的研究については、論文として報告することができた。1回目のデルファイ調査結果については、要介護高齢者、認知症高齢者、終末期の対象者、神経系難病患者への支援について各職種の役割の認識の違いについて分析し、それぞれの職種が自らの役割と認識している内容について論文で報告している。更にこの調査結果については、訪問看護師の役割に着目し、対象の特徴と日常生活援助の項目について分析を行い、報告したいと考えている。 2回目のデルファイ調査で意見の一致率の高い項目を絞り、分析途中ではあるものの、職種による特徴を確認している。「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル」は、質的研究の結果とデルファイ法による質問紙調査結果をあわせて作成する必要があり、まず以上の結果からモデル案を作成する。その後、実際に在宅ケアを担っている専門職の専門職会議を開催し、モデル案を専門職が納得できものにする必要があると考えており、まだ時間が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
デルファイ法の質問紙調査を2回実施し、一致率を80%以上として、一致率の高い項目を抽出した結果、訪問看護師は147、リハビリ職は58、介護職は35、栄養士は10であり、一致率の高い項目からも職種による役割の特徴がうかがえた。例えば、訪問看護師は役割が多くジェネラリスト的傾向をもち、リハビリ職は在宅医療支援の項目は少なくADLに関する項目が多い、栄養士は食事栄養に関することに役割が集中し、介護職は日常生活援助に関する項目が多い等である。今後の分析の方向としては、質問項目が「対象者の特徴による多職種連携の際の役割」「在宅医療支援における多職種連携の際の役割」「日常生活援助における多職種連携の際の役割」「多職種連携の際の支援の調整」と4のカテゴリーに分かれているため、4のカテゴリーごとの職種の役割がわかるような図表の作成を試み、カテゴリーごとの特徴を確認する必要があると考えている。また質的研究では、「在宅ケアにおける専門職の観察の視点」について、カテゴリー化はしたが、その概念図は作成していない。質的研究結果から在宅ケアにおける専門職の観察の視点についての概念図作成が、「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル」を作成するためには必要である。 上記をふまえ、「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル」を作成する。結果の分析途中ではあるが、結果からは職種による役割には深さと広さがあると考えている。また、作成したモデルは、在宅ケアを担う専門職が納得できるものでなければならないため、専門職会議を行い、意見を得る機会をもちたい。そのため「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル案」をまず作成し、専門職にモデル案への意見をもらい、修正を加えモデルを完成させる予定である。 また研究結果は、論文、学術集会での発表等をとおして、報告していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)デルファイ法による質問紙調査への回答の回収には、予想以上に時間がかかったため、2回目の調査が終了したところである。これから、「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル」の構築に向けてデルファイ調査の結果を分析し、「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル(案)」をまず作成し、専門職会議等も行い、モデルを完成させなければならない。研究結果から作成したモデルが、在宅ケアの専門職からみて、現状にあった納得できるものであるか確認することが望ましいと考えている。今後、上記に述べた内容を計画的に実施していく必要がある。またこれらの研究結果については学会発表、論文投稿などで報告する予定である。 (使用計画)1.2回目のデルファイ調査の結果を分析し、「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル(案)」を構築する。そのためには、現状把握のため実施した質的調査の結果についても更に修正を加え、両者をふまえたモデルの構築とする。 2.「多職種の観察の視点を活かした支援者連携モデル(案)」について、在宅ケアの専門職に参加を依頼し、専門職会議を開催する予定であり、そのための会場費、参加者の交通費、ペットボトル等の飲食費が必要となる。3.研究結果は論文として報告、また学術集会で発表する予定であり、論文投稿費、学会発表では旅費交通費等が必要となる。最終的な検証とその結果の公表に注力していきたい。
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