2016 Fiscal Year Research-status Report
市町村行政の保健から福祉部門に配置された保健師が継承する家庭訪問援助の普遍的特質
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15K11847
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田村 須賀子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50262514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 恭子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (50324083)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福祉部門に配置された保健師 / 家庭訪問援助 / 保健師の意図 / 保健師の行為 / 福祉の窓口に持ち込まれた当事者・家族の支援ニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、市町村行政の保健から福祉部門に配置された保健師による、障害者及び児童の福祉、介護保険等の利用者とその家族に対する、家庭訪問も含む個別支援の特質を(1)熟練保健師への支援事例調査により明確にし、(2)有効性が高い積極的個別支援内容を取り出し評価検討する。これにより、保健師による家庭訪問も含む個別支援の普遍的特質を明確にし、福祉分野でも機能し得る積極的個別支援指針を得るための基礎的研究を行う。 行政の福祉部門に持ち込まれた福祉サービス利用者と家族への、熟練保健師(原則5年以上の実務経験)による家庭訪問も含む個別支援過程における保健師の意図と行為を調べる。 データ収集は、家庭訪問を行った保健師に個別支援再現記録を作成してもらい、研究者がその記述内容を理解するためインタビューで内容確認する。ここでの記述表現は、保健師が内面で考えたことが、事実に忠実に伝わるものでなければならない。記述データは、情報提供保健師が文章推敲・加筆修正し、再び研究者が確認するというやりとりを合意できるまで繰り返す。 データ分析は、保健師の行為と、その行為を方向づける意図の内容分析と、視点をあてた詳細な分析を行う。詳細な分析の視点は、先行研究により妥当性が確認できており、これまでの研究経過で修正を重ねて採用してきたもので、(1)看護援助を提供する者と受ける者との相互作用、(2)家庭・地域生活を含めた援助提供、(3)援助ニーズの優先度の判断と援助提供方法の選択、(4)対象の過去の経験に対する援助提供、(5)保健医療福祉サービスへの適用、(6)看護援助の他事例や保健事業・施策への反映、(7)関係職種との連携、である。 この記述データの記述と分析の適切さは、研究組織内さらに家庭訪問実践・教育経験のある看護研究者2名に検討してもらう。 今年度は、地域包括ケア、児童の福祉部門保健師(2名)による支援過程を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障害者、児童の福祉、介護保険の各福祉部門に保健師を配置している「市」(富山、長野、山梨、他関東圏)で、保健師(6~9名)予定のところ、保健師(5名)による支援過程を調査し、内容分析を終えている。また保健師(1名)については依頼中である。 これまでの保健師の意図と行為の記述総件数は、意図345件、行為2,053件である。内容を分析した結果、市町村行政の保健から福祉部門に配属された保健師が意図し、重要と考える個別支援の内容として13項目を抽出した。(1)当事者・家族との人間関係をつくり、支援者として受け入れてもらえるようにする。(2)住居内の整理整頓などで当事者・家族の方針を把握し、尊重しても良いか検討する。(3)当事者・家族の読み書き能力とプライドに配慮する。(4)一時保護や緊急入院など、支援する側からの強い介入の必要性を想定しながら関わる。(5)親・兄弟・親戚が、当事者の支援者になりうるかどうか判断する。(6)相談を持ち込む近隣住民が、当事者・家族の支援者になりうるかどうか検討する。(7)当事者・家族に何かあったときの見守り体制を創る。(8)施設入所等生活拠点の決定に際して、当事者・家族が自分たちで結論を出せるようにする。(9)福祉サービス提供機関職員の支援姿勢・能力を把握する。(10)福祉担当課職員が過去に介入した経過・家族歴について把握する。(11)当事者・家族の能力を見出し、日常生活の継続や就労できるようにすることをねらう。(12)当事者の日常生活の継続や就労支援で、関係職種(保健師除く)と合意・役割分担する。(13)支援事例を通して、保健分野担当保健師との連携体制を創る、である。これらの項目をもとに、重要な個別支援として合意できるかどうか、全国の市役所福祉担当課に配置された保健師の意見をきくための調査用質問紙作成する。 以上のとおり、概ね当初計画どおりの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)福祉部門に配置された保健師(1~2名)による支援過程の調査を追加する。 (2)市町村行政の保健から福祉部門に配置された保健師による、障害者及び児童の福祉、介護保険等の利用者とその家族に対する、家庭訪問も含む個別支援の特質を検討する。 (3)有効性が高い積極的個別支援内容を取り出し、その普遍性・特異性について評価検討し、保健師による家庭訪問も含む個別支援の普遍的特質を明確にし、福祉分野でも機能し得る積極的個別支援指針案を作成する。 (4)分析結果と個別支援指針案の評価のため、全国の市役所福祉担当課に配置された保健師の指針案に対する認識についてリカート式質問紙調査を郵送法により実施する。
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Causes of Carryover |
おおむね順調に進んだが、前年度内実施予定であった全国調査票の印刷・発送が出来なかったため、\206,064の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)追加の調査のための旅費と謝品、データ記憶用機器購入費;国内旅費(2ヶ所)、調査協力の保健師謝品(2人).(2)福祉分野でも機能し得る保健師による積極的個別支援指針の検討と案の作成のための会議費と旅費;会場費(1ヶ所)、国内旅費(1ヶ所×1回).(3)指針案を評価するため、リカート式質問紙調査を郵送法のための経費;調査票印刷費(1式) 全国市町村約800ヶ所へ依頼・返信・礼状の通信費(800ヶ所)、(平成29年発送、回収).(4)調査票のデータ入力委託費(1式).(5)中間報告のための学会参加費と旅費;国外学会 (1ヶ所×1回)、国内学会(1ヶ所×3人)
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Research Products
(2 results)