2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11860
|
Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
秦 さと子 (小野さと子) 大分県立看護科学大学, 看護学部, 講師 (10443897)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 嚥下機能 / 運動習慣 / 身体活動量 / 運動強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの取り組みで有酸素運動を30分間実施後、実施前に比べ嚥下反射惹起時間が短縮する可能性があることが分かった。このことから運動習慣のある人は嚥下反射惹起機能が良い状態で維持されている可能性が考えられた。そこで、平成28年度は、高齢者の日常生活における運動習慣と嚥下機能との関連を明らかにすることを目的に取り組んだ。得られた結果は、以下の通りである。 対象は70歳以上の健康な男女26人(男12人、女14人)で、生活習慣病予防の基準に基づく運動習慣に24人が該当し、そのうち14人がウォーキングを行っていた。対象の嚥下機能は、スクリーニングの基準と比較すると正常範囲であった。しかし、先行研究で示された20歳代と比較すると本研究の嚥下機能は低下しており、加齢の影響を受けている可能性が考えられた。実際、嚥下時の自覚症状について問うと嚥下時に異常を感じる頻度が多く、誤嚥に対し不安定な嚥下機能の状態であることが示唆された。さらに、同世代である70歳代と本研究対象の嚥下機能を比較すると本研究対象者は低下していた。このことから生活習慣病予防基準の運動習慣は嚥下機能の維持には影響していない可能性があると考える。 一方、日本人の7日間の身体活動量総和の平均15~20Exは、65歳以上の生活習慣病予防基準の身体活動量よりも多いため、これを基準に1~8mets毎の運動時間の平均について活動群(15人;57.7%)、非活動群(11人;42.3%)に分けて分析を行った。各metsにおいて活動群の方が非活動群より有意に運動時間が長く、2群間の嚥下機能には有意な差は見られなかった。つまり、運動強度に関係なく時間をかけた運動は、嚥下機能維持との関連がない可能性が示唆された。今後は運動強度を考慮した運動習慣を持つ人の嚥下機能について検討を行う必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域在住高齢者の多くは運動習慣があるが、嚥下の予備能を維持させるほどの運動強度は無い可能性が明らかになった。このことから、嚥下機能における予備能をより高い状態で維持させるためには、適度な強度をもつ運動方法の検討が必要であることが分かった。以上より次年度の課題が明確となり、次年度の取り組み準備に着手できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、高齢者に対し継続的に取り組める嚥下機能低下予防の運動を検討する。平成29年度は発案した運動の効果について若年者対象に検証する。平成30年度には、継続的な取り組みを高齢者対象に実施し効果の検証をおこなう。
|
Causes of Carryover |
現在、本研究の成果を論文投稿準備中のため平成28年度には投稿費用を使用しなかった。また、研究協力者との打ち合わせを予定していたが、研究協力者が別費用で研究責任者の施設に来られた時に打ち合わせを実施したため、旅費を使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、嚥下機能維持のための運動方法を提案し、効果を検証する。そのための評価指標として筋電計を使用する。その購入にかかる費用として使用予定である。
|