2015 Fiscal Year Research-status Report
独居高齢者の生活上の危機と危機管理の方法に関する研究
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15K11862
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
工藤 禎子 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (00214974)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高齢者 / 危機 / 危機管理 / リスク・マネジメント / ソーシャル・キャピタル / 災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の平成27年度の実績:本研究の最終目標は、在宅で生活している高齢者の生活上の危機とその管理のために行われている内容を明らかにし、今後の危機管理の支援のあり方を検討するものである。研究は大きく2つの研究課題を想定しており、1点目は、高齢者が「もしも、万が一」という主観的な危機の内容を相対的に、量的記述的に明らかにすることである。2点目は、在宅の高齢者における、身体機能低下に伴うリスクや、災害等の外的危機による生活のダメージの回避などのために、高齢者が生活の中で行っている対処・工夫を明らかにすることである。 平成27年度は、平成28年度の量的調査の実施に向けて主に以下の5点を行った。1)危機と危機管理に関する国内外の研究報告論文の収集とレビューを行った。2)1)をもとにした調査票の作成を行った。3)計4回の研究会の実施により、調査方法、レビューの方向を定めた。4)調査対象地域の選定を行い自治体担当者との交渉により、1市1地区と1町の悉皆調査の受諾が決定し、調査方法と内容について検討を進めることができた。5)作成した調査票を用い予備調査を実施した。
平成27年度の総括:平成27年度は研究計画作成時の内容をほぼ実行できた。特に、予備調査と、自治体からの意見交換を踏まえて、実態に即しかつ高齢者支援の現場に有用なデータを得るための調査票の精度を高めることができた。平成28年度の本調査は、計画通りに進行できる予定であり、これらは平成27年の実績によるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、研究計画に基づき以下を行った。第1に、危機と危機管理に関する国内外の研究報告論文の収集とレビューを行い、高齢者の危機管理には、認知症発症を含む心身機能の低下、家屋・経済問題、災害の対応などが含まれることを明らかにした。 第2に文献からの知見をもとに、調査票の作成を行った。調査票は、研究会において、近接領域の研究者との議論、及び高齢者支援の専門職との討議から、研究目的を明確にするためのブラッシュアップを行い、精度を高めることができた。 第3に、調査対象地域の選定を行い自治体の担当部署の代表との交渉により、1市1地区と1町の悉皆調査の受諾が決定し、調査方法と内容について検討を進めることができた。倫理審査及び、対象自治体の法規担当部署の確認を得ることができた。自治体からの調査のための宛名の提供について、個人情報保護の方法について自治体と協議を進めることができた。さらに、当初の研究会メンバーは保健師職を主としていたが、本研究に関心を持つ理学療法士、作業療法士と、本研究テーマの危機と危機管理に関する研究会を拡大し、多職種連携による検討を加えた。 第4に、作成した調査票を用い予備調査を実施した。予備調査によって、後期高齢者も調査票への回答が可能であること、軽度の認知症を持つ場合も、簡易な設問と文言、文字の拡大により、自記式での一定の回答が得られることを確認した。危機管理という用語への抵抗がみられたため、危機を「もしもの時」という用語へ置き換えること等、研究目的に合致し、かつ研究対象者の理解に添った調査票の修正を行った。 平成27年度の本研究の進捗は、平成27年度の当初の研究計画と一致する。研究は、順調に進展していると評価でき、調査の対象者数を計画以上の規模の人口集団へと拡大できたことと、研究会メンバーとして多職種との検討を加えられたため、計画以上の進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進は、平成28年度に計画通りに本調査を実施する。対象は、2地区の高齢者合計約6,000件である。地域の状況に合わせて、発送時期を調整する。平成28年度末までにデータ入力とデータ確認、記述統計の概要を明らかにする。 平成29年度は最終年度として、多変量解析などの分析を進めるとともに、調査対象地域の自治体職員、保健福祉専門職、民生委員等住民へ、研究結果の説明を行う。 対象地域の関係者への本研究結果の説明と討議により、研究の最終目的である、地域における高齢者の危機管理のあり方を明らかにできる見込みである。 研究結果は、公衆衛生、地域看護関係の学術団体、学会等での報告、論文の投稿等の形で公表する。また、新聞等、一般住民の目に触れる媒体にも情報を提供する予定である。
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Causes of Carryover |
研究調査対象者数について、協力自治体との討議により、初期の計画の抽出調査から全数調査へと変更することとなった。大幅に、印刷代、郵送費、及び入力等に資金が必要になるため、平成27年度の支出を可能な限り抑えて、平成28年度の本調査に活用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査対象数が増えたことに伴う調査費用増大分(印刷、郵送、データ入力)に使用する。
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Research Products
(5 results)