2016 Fiscal Year Research-status Report
多重災害避難住民のレジリエンスの現状と中長期支援に関する研究
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15K11877
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
天谷 真奈美 京都大学, 医学研究科, 教授 (00279621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レジリエンス / 災害 / 精神的健康 / ミックス・メソッド法 / ストレス / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東日本大震災と福島原発事故による中長期避難生活を続ける被災者を対象に、東日本大震災から5年を経過した時点での避難生活における困難な状況と、それを乗り越える精神的適応力・回復力であるレジリエンス、およびその規定要因を明らかにすることにより、レジリエンスを高める中長期支援策を示唆することを目的としている。 研究2年目にあたる平成28年度は、所属機関の倫理委員会の承認を得た後に、被災地での調査に入るうえで研究倫理を遵守するために、被災地住民のサポートをする現地自治体の倫理規定に沿った処置を十分に行い、被災地での調査の実施を円滑に行えるように協力ネットワークのの関係強化に努めた。 本調査の第一段階として、避難者長期化する中での住民の心の健康状態と回復・活動状況に関する自記式アンケート調査のパイロットスタディを実施した。その結果についての表面妥当性や内容妥当性について専門家会議によって検討した。その調査用紙を改良した後に、本格調査を実施した。帰宅困難地域に住民票があり、被災した成人のうち総合健診の対象である総数8,564名に調査用紙を配布し、3,389名から回収することができた。回収率は39.6%あった。現在は、定量的にレジリエンスと関連要因について解析を実施中であり、全体的な傾向を明らかにすることを目指している。 更に本調査の第2段階として、被災した体験の中から立ち上がり、被災後5年の歩みを通じて回復を遂げた被災者のレジリエンスの特性的な側面について、定量的調査では明らかにできない繊細な現象を読み取るために面接調査を試みた。以上、研究2年目は定量的調査と定性的調査の2つとも実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況が大変スムーズに進展している理由は、主に2つある。 ひとつには本調査を実施するだけでなく、継続的に被災住民や被災した自治体の保健活動への支援実施などを通じて良好な関係性を築き、調査の必要性についても現地の状況をリアルタイムに把握し反映した内容であるため、研究の有用性を現地で認められ、研究をを円滑に遂行しやすい状況にある。 ふたつには、ミックスメソッド法の用い方について、研究方法論と先行研究をもとに再検討した結果、本研究では定量的調査を主要とし、定性的な研究を副次的補完的に行い、包括的な研究成果を導けるよう研究の順序性を改めたことにある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、定量的調査結果と定性的調査結果と2つの解析に相当な分析時間を要することが考えられる。そのため、最終年度も綿密に立てた研究計画を着実に行動化する必要がある。 また、被災した体験の中から立ち上がり、被災後5年の歩みを通じて回復を遂げた被災者のレジリエンスに関する面接調査結果については、体験の意味を分析者が的確に吸い上げられるように、その体験の内容を熟知している現地の研究協力者と検討を重ね、理解を深めていく必要があると考える。また研究参加者からのチェックを受け、研究成果の信用性の確保に努めたい。 そして定量的調査結果と定性的調査結果を統合し、震災からの中長期避難生活を余儀なくされている対象のレジリエンスを高める中長期支援策を導き、研究目標に到達できるように努めていきたいと考える。
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