2016 Fiscal Year Research-status Report
異文化適応問題を抱える移住者・難民に対する精神保健福祉専門家の態度に関する研究
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15K11903
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
鵜川 晃 大正大学, 人間学部, 准教授 (70326320)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 異文化適応 / 移住者・難民 / 精神保健福祉専門家 / 態度 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本での調査から見えてきたこと:異文化適応問題を抱えている移住者・難民のメンタルヘルスケアに積極的に関わる精神保健福祉専門家の背景には①自身がマイノリティとなったことがある(三親等までの身内が外国につながる人と婚姻している、海外居住経験がある)、②使命感を持っている(明確な目標を掲げて支援に取り組んでいる)、③好奇心の強さ(異なるものへの興味、感心の高さであった)、の3つのキーワードが見いだされた。また支援を継続することの難しさについては①医療費の未払いの問題(行政、NPOなどと連携しなければ、医療費を得ることが難しい)、②同じ志をもつ仲間の少なさ(移住者・難民のメンタルヘルス支援を行っている人々は孤独感を抱えている)、③移住者・難民のメンタルヘルスについて学ぶ機会の少なさ(大学のカリキュラムの中には取り入れられていないこと、専門誌・著書の少なさ)の3点であった。 韓国での調査から見えてきたこと:異文化適応問題を抱えている移住者・難民のメンタルヘルスケアに積極的に関わる精神保健福祉専門家の背景は日本の分析結果と同様であった。韓国では同化主義政策の下、移住者・難民の支援が行われており、そのため結婚移民や脱北者への支援は手厚いが、難民に関しては適切な支援システムが確立していない。専門家が抱える支援の困難さは支援する対象によって異なっていた。脱北者と結婚移民の支援においては①相手の文化を理解し尊重すること、②社会にある偏見・差別の問題への取り組み、難民の支援においては①支援にかかる資金不足、マンパワー不足、②同じ志をもつ仲間の少なさが、困難なこととして挙げられた。また韓国では多文化間メンタルヘルス支援は脱北者、難民には積極的に取り入れられていたが、結婚移民に対しては支援システムは確立されていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はほぼカナダでの量的・質的調査を行うのみであり、すべての調査結果がそろい次第、分析、考察を行い、報告書を作成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年5月までに韓国での調査結果報告書を作成し、韓国語へ翻訳の上、雑誌へ投稿する。同年8月までに日本での量的・質的調査を終え、同年9月にカナダでの量的・質的調査を行う。12月までに日本とカナダでの調査結果の分析を行う。平成30年1月には日本とカナダでの調査結果をもとに報告書および論文を作成する。論文は英語へ翻訳の上、雑誌に投稿する。平成30年2月に日本、韓国、カナダでの調査結果をまとめた報告書を作成し、協力機関へ結果を還元する。
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Causes of Carryover |
平成28年度はカナダでの調査が施行できなかったため残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はカナダでの研究倫理審査が終了しているため、平成29年度9月にカナダでの調査を施行する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 移住者・難民のこころ2016
Author(s)
野田文隆
Organizer
第23回多文化間精神医学会学術総会
Place of Presentation
栃木県総合文化センター(栃木県・宇都宮市)
Year and Date
2016-10-01 – 2016-10-02
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