2017 Fiscal Year Research-status Report
植物芽生えの初期成長過程に対する重力影響の解析:特にオーキシン極性移動の観点から
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15K11920
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
宮本 健助 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10209942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 真理子 鳥取大学, 農学部, 准教授 (20324999)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自発的形態形成 / オーキシン極性移動 / 微小重力環境 / 過重力環境 / 重力応答性成長制御物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
固着生活を営んでいる植物の形態も重力の支配下にあり、宇宙微小重力環境下で植物を発芽・生育させると自発的形態形成と呼ばれる特異な形態形成を示す。本研究では重力による植物の形態形成制御機構の解明を目指し、特に極性移動という特異な移動を示す植物ホルモン・オーキシン(インドール酢酸、IAA)や新規重力応答性屈性制御物質に着目した研究を展開した。主な成果は下記の通りである。 ① 重力応答が正常なアラスカエンドウと重力応答突然変異体ageotropumエンドウを比較しアラスカにおいてのみ重力刺激に応答して質的・量的変動を示す物質を探索した。その結果、反重力側で量的変動を示す生長抑制物質、β-(Isoxazolin-5-on-2yl)-alanineの同定に成功した。この結果は、茎の負の重力屈性が反重力側の成長速度の低下に基づく偏差生長であることを意味し、成果をPlant Growth Regulationに発表した。 ② 擬似微小重力模擬装置・3次元クリノスタット上と1G下で発芽・生育させたアラスカエンドウを対象に、IAA極性移動および関連遺伝子発現を解析した。極性移動には芽生えの子葉側と反子葉側上胚軸で偏りがあること、擬似微小重力下ではそれが低下すること、擬似微小重力下ではIAA極性移動に関係する排出と取込みキャリアータンパク質をコードしている遺伝子(PsPINsとPsAUX遺伝子)のmRNAが地上対照に比べて少いことから、重力はIAA極性移動関係遺伝子発現を介して極性移動を制御していることを示唆した。 ③ 多様な二次代謝産物を多く含むキク科薬用植物を対象にIAA極性移動阻害物質を探索した。ダイコン胚軸切片を用いた生物検定法と各種クロマトグラフィーを駆使し、複数のゲルマクラン型セスキテルペン類を単離・構造決定し、成果をActa Agrobotanicaに論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力による植物の形態形成機構の解明をめざし、3次元クリノスタットを用いた擬似微小重力環境、さらには重力応答突然変異体ageotropumエンドウを用いて、成長生理学的解析、植物ホルモン動態解析などを行い、複数の論文発表に至っている。それ故、十分な成果が挙げられていると考えている。しかしながら、分子メカニズムの解析について、オーキシン極性移動関連タンパク質であるPsPIN1とPsAUX1キャリアータンパク質の抗体を用いた免疫組織化学的解析の途中であり、この解析を期間延長して実施し、さらなる成果とすることを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの3年間の成果の中で、オーキシン動態に関する分子生理学的解析の内の免疫組織化学的解析の途中である。期間延長しこれを行い、遺伝子発現解析結果と合わせ、重力のホルモン動態に対する影響をとりまとめる予定である。 なお、新規オーキシン極性移動制御物質の作用機構に関する論文を現在執筆中である。 以上のように、すでに複数の論文として成果を発表できていることから、本研究実施の目的は達成できていると考えているが、1年の延長により研究成果をより良いものにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
オーキシン極性移動関連タンパク質の免疫組織化学的解析を予定していたが、研究協力者からの抗体の分与が遅れた。その解析に関わる費用、および成果発表に関わる費用を計上していたため、次年度使用額が生じた。
オーキシン極性移動関連タンパク質の免疫組織化学的解析に使用する予定である。さらに、成果を学会および論文発表の形で発信する経費とする。
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Research Products
(11 results)