2016 Fiscal Year Research-status Report
月・火星の模擬環境となる国際宇宙ステーション曝露部実験に向けた線虫ライフ実験
Project/Area Number |
15K11922
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
坂下 哲哉 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員(定常) (30311377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 秋梅 (張秋梅) 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00260604)
佐藤 達彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (30354707)
簗瀬 澄乃 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (90249061)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際宇宙ステーション / 宇宙線 / 放射線生物学 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、モデル生物線虫を用いて、将来、国際宇宙ステーション(ISS)の人口重力発生装置と組み合わせた『月・火星環境を模擬した線虫ライフ(サイエンス)実験』を実現するための様々な基礎研究を実施することを目的とする。具体的には、①宇宙放射線環境の推定、②各種生体指標の線質依存性評価、③宇宙実験を目指した実験機材の開発を行う。各テーマについて、平成28年度は以下の成果を得た。③については、JAXAにて開発済みのため平成28年度以降のテーマには含まない。 ①宇宙放射線環境の推定:粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて月表面における宇宙線環境を模擬した線量推定計算を実施した。 ②各種生体指標の線質依存性評価:個体レベルの指標として遊泳指標に与える影響に関して画像解析を用いて調べ、従来の運動に関わる有意検出線量である数百Gyと比較して2桁以上低い線量から影響を検出できる可能性を見出した。前年度までに構築した、細胞死についてアクリジンオレンジによる染色系と、オートファジーについてlgg-1遺伝子配列と緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合配列を導入した線虫を用いて、放射線に対する影響を解析した。その結果として、細胞の自食作用であるオートファジーが体細胞でも誘導されることが確認できた。そこで、その生物学的意義を明らかにするため、線虫の全身運動に着目して解析を進めた。これらの成果を国際学会にて発表した。また、高酸素曝露と放射線被ばくの複合影響を解析するために前年度構築した実験系を用いて、線虫の寿命への影響を調べた。その結果、一時的な高酸素曝露のみでは野生株の寿命に影響しないが、同時に放射線照射することによって寿命延長が観察された。今後は、寿命延長の要因を究明するため、抗酸化系およびエネルギー代謝の制御に関与する遺伝子発現を標的として解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3つのテーマ、①宇宙放射線環境の推定、②各種生体指標の線質依存性評価、③宇宙実験を目指した実験機材の開発、にて研究を開始したが、③についてはJAXAにおいて機材開発が完了しているため、①と②の内容について平成28年度以降研究を進めている。 ①宇宙放射線環境の推定については、最終目的であるISS、月、火星の宇宙放射線環境の推定の内、平成27年度にISS、火星について成果を挙げることができた。平成28年度は、月の宇宙線環境を模擬したシミュレーションを実施した。 ②各種生体指標の線質依存性評価については、遊泳指標に与える影響に関して画像解析を用いて調べ、従来の運動に関わる有意検出線量である数百Gyと比較して2桁以上低い線量から影響を検出できる可能性を見出した。また、放射線に対する影響を解析した。その結果として、細胞の自食作用であるオートファジーが体細胞でも誘導されることが確認できた。そこで、その生物学的意義を明らかにするため、線虫の全身運動に着目して解析を進めた。さらに、高酸素曝露と放射線被ばくの複合影響の解析については、野生株の寿命に影響することが判明した。これまで、野生株における放射線のホルミシス効果に関する報告はあるが、高酸素との複合効果による寿命延長効果は新たな知見である。以上より、本テーマについても、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究について2つのテーマ、①宇宙放射線環境の推定、②各種生体指標の線質依存性評価、について、以下の方針に沿って研究を進める。 ①宇宙放射線環境の推定については、計算の統計誤差を小さくし、測定値との差の原因を考察するとともに、成果をとりまとめて国際学会や論文で発表する。 ②各種生体指標の線質依存性評価については、引き続き、画像解析を用いた遊泳指標の解析、検討した指標のうちオートファジーについて誘導が観られたので、この指標における放射線の特徴を明らかにするため、酸化剤や紫外線に対する応答と比較する、及び、高酸素曝露と放射線被ばくの複合影響の要因を究明するための解析を実施する。
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Causes of Carryover |
当初、宇宙線環境評価モデルを開発した成果について発表予定であった国際学会COSPARが、開催地トルコの政情不安定によりキャンセルとなった。また、照射実験回数が都合によりキャンセルとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
キャンセルとなった学会については、代わりに「中性子及びイオンに関する線量評価国際学会NEUDOS13」(ポーランド,2017年5月14-29日)にて同様の成果を発表する予定である。照射実験について、次年度に実施することとした。
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[Presentation] Impaired p53/CEP-1 induces hormetic lifespan extension through the metabolic transition in C. elegans2016
Author(s)
S. Yanase, T. Shoyama, K. Yasuda, H. Suda, N. Ishii
Organizer
C. elegans Topic Meeting: Aging, Metabolism, Stress, Pathogenesis, and Small RNAs
Place of Presentation
University of Wisconsin (Madison, WI, USA)
Year and Date
2016-07-23
Int'l Joint Research