2015 Fiscal Year Research-status Report
津波被害を受けた民間所在歴史資料の歴史情報保存に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
15K11925
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
天野 真志 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (60583317)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 災害対応 / 文化財防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古文書を中心とした紙媒体歴史資料の自然災害からの保全と長期保存に向けた技術的方法論の確立を目指すものである。特に、東日本大震災にともなう大規模津波では、救済された被災歴史資料の長期的保存を視野に入れた復旧対応に関する方法論の未確立と、そのための関連分野による連携体制の未整備が顕在化した。本研究では、東日本大震災への対応策として、また今後発生が予想される大規模自然災害に備えた歴史資料の災害対策として、古文書学・アーカイブズ学・保存科学など多角的観点に基づき、被災紙媒体資料の大量復旧に関わる実践的かつ普遍的な方法論を提示する。 本研究では、古文書や軸資料を中心とした紙媒体資料を対象とする。特に、民家に多く伝来する近世から近現代資料であるため、それらの保存法を目指し、歴史学と保存科学双方の観点を集約した複合的視野に立つ復旧・保存論を提起するものである。このような視点に配慮し、各専門分野との協力関係を構築するとともに、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワークや市民と共同した津波被災歴史資料の復旧工程を実践する。そのことで多様な紙媒体資料の性格や被害状況をサンプリングし、それらを基にした実践的災害対策研究を実施する。 研究経費については、被災歴史資料の復旧にかかわる機材や物品、原本調査・分析のための計測・観察器具の購入、調査のための国内旅費、参考文献の購入費等が主なものである。研究成果は、論文の公表に加え、宮城県をはじめとした各地の被災資料復旧事業への技術提供により社会還元をおこなう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は初年度に当たり、東日本大震災前後の諸地域で実施される文化財防災に関する取り組みを調査した。 特に、2016年1月に高知県高知市において、こうちミュージアムネットワークと「文化財防災意見交換会」を実施し、南海地震を想定した防災対応、日常的な文化財調査の双方向的な取り組み状況について協議したことで、今後の防災体制に東日本大震災の教訓がどのように活かされていくべきかの知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年9月に発生した関東・東北豪雨によって水損被害をうけた茨城県常総市・下妻市の被災古文書等の対応が必要となった。今後、当被災古文書等の対応に関しても、本研究課題のテーマに加えていく必要がある。
|
Causes of Carryover |
購入予定であった参考資料の発行が遅れたことに伴い購入物品の支払いが次年度となったため。 それにあわせて年度末まで保存対象データの容量が年度末まで把握できず、対象機器の購入が年度末となったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度中に使用は完了した。
|
Research Products
(5 results)