2016 Fiscal Year Research-status Report
地理的距離を考慮した東日本大震災の心理的反応に関する継続的調査研究
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15K11938
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
大橋 智樹 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (00347915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 光和 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (00149783)
木野 和代 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (30389093)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 心理的反応 / 地理的距離 / 大学生 / 価値観の変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,東日本大震災に対する心理的反応を全国的かつ継続的に測定することで,その被災地からの地理的距離による差異の経年変化を明らかにすることを目的としている。さらに,新たに大規模災害が発生した場合には,その心理的反応を解析することも目的の一つとなる。 平成28年度は,例年継続的に実施している1月の定期調査は予定通り実施した。それに加えて,28年4月に発生した熊本地震の影響を探るために,7月にスポット調査を追加実施した。これら2回の調査に過去のデータを加えて分析した結果,熊本地震の影響が九州地方に現れたことが確認できた。すなわち,本調査で継続的に用いている質問紙の下位尺度の一つである「震災観」について,九州地方の評定平均値が東日本大震災後2年目の水準近くまで上昇したのである。これは熊本地震の発生によって,東日本大震災への意識が強まったと解釈できる。このことはまた,本研究が目的の一つとする「新たな大規模災害発生の際の心理的反応の解析」に有効であることも示した。 一方,熊本地震の影響は,本研究で「隣接領域」と呼ぶ,東日本大震災の被災3県に隣接する7県においても5年目調査で示されていた意識の低下傾向が,2014年度水準まで回復したことも明らかにされた。これは,熊本地震の発生によって、当該地域の人びとの東日本大震災の記憶が想起されたものと想像される。これらの成果を東北心理学会第70回大会において発表し,多くの来場者を得た。 なお,本研究に関連して,平成27年度までの成果に基づき,第31回国際心理学会(横浜)において1件の研究発表及び,1件のinvited symposiumを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
災害の発生を幸運と捉えるわけにはいかないが,本研究の遂行にとって熊本地震の発生は大きな成果をもたらした。研究概要に記したとおり,毎年1月の定期調査のほか,7月にスポット調査を実施した結果,熊本地震の被災地からの地理的距離と,東日本大震災の被災地からの地理的距離がそれぞれ近い領域の心理的反応に興味深い特徴が検出された。このことは本研究の目的とする災害に対する心理的反応を継続的に測定し続ける意義を示したものであると同時に,さらに詳細に分析を進めることで災害と心理的反応のメカニズムに迫ることのできる契機になったと考えられる。これらのことから,当初の計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年1月の調査によって,本研究が本助成を受ける前から通算して7回の調査を実施したことになる(平成28年7月のスポット調査を含む)。熊本地震の発生及びスポット調査の実施は計画外だったため,これらを含めた分析を進行している状況にある。平成29年度は,これらの結果を踏まえて,研究の中間的な総括を実施する予定であり,原著論文の投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた意見交換が先方の都合で実施できなくなったために,そのために予定していた旅費が執行できなかったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
できるだけ早い時期に予定を調整し,当該意見交換を実施することにしており,その旅費として執行する計画である。
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Research Products
(3 results)