2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K11939
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
山崎 泰央 石巻専修大学, 経営学部, 教授 (10387293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 慎吾 石巻専修大学, 経営学部, 教授 (20254831)
李 東勲 石巻専修大学, 経営学部, 准教授 (50511755)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 沿岸被災地 / 創業支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年は宮城県沿岸部における震災後から現在まで、行政による創業支援事業について分析を行った。このような事業は民間組織への委託を受けて実施している。そこで、創業支援の体制について「組織形態」と「支援ノウハウ」の関係から分析した。結果として、創業支援ノウハウは外部からの持込に頼り、地域や組織で専門的人材の育成をしていないことがわかった。このような創業支援の体制について他の沿岸被災地と比較するために、南相馬市の創業支援について調査をした。南相馬市は福島第一原子力発電所の事故により原町区の一部と小高区全域に避難指示が出された。その後、2016年7月12日に避難指示が解除されたものの、2割程度の住民しか帰還していない。これから地域の内発的発展を促すために、(株)ゆめサポートの創業支援体制について調査をしている。 一方で創業者の事例として石巻市の「日和キッチン」について調査をした。同事業所は2013年に創業し、2016年に他の経営者に営業を譲渡している。創業者はボランティアに来たことがきっかけで、創業をしている。2012年に「内閣府復興支援型地域社会雇用創造事業」の支援を受けている。しかし、そうした支援のメリットは創業資金の負担軽減のみで、事業ノウハウについては自分で試行錯誤しながら獲得をしていった。その過程で、日和キッチンは地域で信頼関係を構築し、それが同店の立地する「富貴丁通り」の活性化へと展開をしていった。さらに、自分が積み上げた飲食業のノウハウを移転するため、チャレンジオーナー制度をつくり創業者の育成も行った。このように、事業を点から面へと展開を行っているが、事業の支援は創業資金だけであった。 日和キッチンの事例を見る限りは、震災後に実施された創業支援事業は、創業の意思決定のハードルを低くしたものの、事業成長に必要なノウハウは創業者自身が獲得していることが分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅延の理由の一つ目は、十分な研究時間の確保ができなったことである。学部の新カリキュラムの運用が始まり、旧カリキュラムと新カリキュラムの講座が並行して開講していることに加えて、カリキュラム改変によって新たに開講した講座の立ち上げも担当したため、研究に割り当てる時間が少なくなった。 二つ目は被災地の事情が変わって、研究対象となる創業者にアクセスしにくくなったからである。創業者への接触を試みたが、廃業や移転、業務上の理由などで協力が得られないことがあった。これまでの研究の遅延が影響して、時期を逃している点も否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
人口減少社会の到来が確実になったいま、被災地では人口流出に歯止めをかけ、経済的な自立を目指す必要がある。そのためには創業を促進し、内発的発展を促すことが対策の一つといえる。石巻市の創業支援の実態はほぼ把握できたので、その比較対象として、震災後の福島県沿岸部にある南相馬市の創業支援体制と、震災後に創業した企業について調査し、石巻市の事例と比較検討をおこなう。また、沿岸部との比較対象として、内陸部の創業者についても調査・検討を加えたい。 創業者については、「日和キッチン」の事例について、創業から閉店にいたるまでの人的ネットワークの広がりと影響について、さらに調査を進める。また、「日和キッチン」の創業者は外部からの移住者の成功事例なので、反対に地域に地縁を持つ創業者についても調査を行いたい。地域内部の創業者が地域でもともと持っているネットワークの働きについても検討を加えたい。 そのうえで、内発的発展を促すために、沿岸被災地域における創業支援の問題点を浮き彫りにし、資金提供中心の現在の支援策以外に有効な方法を提案したい。
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Causes of Carryover |
理由の一つ目は、十分な研究時間の確保ができなったことである。学部の新カリキュラムの運用が始まり、旧カリキュラムと新カリキュラムの講座が並行して開講していることに加えて、カリキュラム改変によって新たに開講した講座の立ち上げも担当したため、研究に割り当てる時間が少なくなった。 二つ目は被災地の事情が変わって、研究対象となる創業者にアクセスしにくくなったからである。創業者への接触を試みたが、廃業や移転、業務上の理由などで協力が得られないことがあった。これまでの研究の遅延が影響して、時期を逃している点も否めない。 今後の使用計画としては、福島県および熊本県の被災地の創業支援事例調査で旅費およびその他(レンタカーなど)を使用する。その他、消耗品部分は予算超過をしているので人件費、その他の予算の一部を充当する。
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Research Products
(2 results)