2015 Fiscal Year Research-status Report
災害過程における市民活動の役割に関する社会学的研究
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15K11943
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅 磨志保 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60360848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 祐介 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90253369)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 市民活動 / 災害過程 / 災害復興 / 被災者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、10年が経過した中越地震に関わる研究協力組織からの依頼で、当時、支援に関わったボランティアと被災者と共に、中越における「災害ボランティア」を検証する研究会に参画することになり、新たな知見を得ることができた。研究会を通じて中越地方特有の「災害ボランティア」観、それに基づいて展開されてきた震災復興の実践、これと並行して行われてきた他地域の災害支援、それらの中で行われてきた新たな人材の獲得が、従前の地域課題(少子高齢・過疎化、集落消滅)も含めて地域課題を解決していく再生産のプロセスにつながっていることを、実際にその過程の一部に関わりながら学ぶことができた(研究会の成果は「将来の被災地」にボランティアと被災地の関係を伝えるガイドブックとして発行された)。 20年を迎えた阪神・淡路大震災に関しても、復興まちづくりの中間支援NPOの理事に就任する機会を得たことで、これまで市民活動としては十分に把握していなかった復興まちづくり支援の活動について新たな知見を得ることができた。併せて、復興まちづくり事業と商業機能の再建のねじれた関係について貴重なデータにアクセスする機会も得たので、2016年度の研究に生かしていくことを予定している。 5年目を迎える東日本大震災に関しては、発災直後から概ね3年目頃までのマクロデータを活用して、ボランティアをめぐって噴出した様々な言説の検証を試みた。具体的には、活動者数、集まった活動支援金の金額とその集約・配分過程、セクター間の連携とセクター内の連携の実態等について検討を行った(業績:2016年出版図書)。また併せて、学会のシンポジウムで、東日本大震災5年目の市民活動の課題と可能性について、中越、阪神から得られた知見を踏まえた現時点までの考察を発表した。分担者は「地方創生」の研究が注目される中、これと並行して被災地の復興に関する検討を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中越地震および阪神淡路大震災に関しては、当該災害の復興過程に関わる組織との共同研究・活動実践に参加する機会が得られたことで、研究計画作成時は予定していなかった知見を得ることができた。それらへの参加を通じて新たな着想を得ることができ、2016年に計画していた研究を先取りして進めることができた。また、東日本大震災に関しても震災5年の節目の検証を行う機会を得て、マクロデータの分析を先取りして行うことができた。他方、東日本大震災に関するミクロな社会過程に関する調査が予定よりも進まなかったこと、分担研究者との共同調査が行えなかったことから、上記のような評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年は、東日本大震災におけるミクロな支援活動過程に関する調査を継続すると共に、予定している10年目以降の阪神・淡路大震災における復興過程とそこに寄与した市民活動に焦点を当てた調査をしていく。特に後者については、住民主体の復興まちづくりと商業者の再建に向けた取り組みを、復興を担う市民活動の文脈に位置付けて検討していくことを試みたい。また併せて、こうした復興まちづくりの取り組みの検討を通じて、東日本大震災の復興事業で顕在化してきている問題や、4月に発生した熊本地震の今後の地域再建に寄与する知見を引き出すことも視野に入れて進めていきたい。
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Causes of Carryover |
分担研究者と予定が合わず、共同訪問を予定していた被災地調査および打ち合わせができかなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査のための旅費、データの収集・保存・管理・分析に必要な物品・サービスの購入および、データ処理作業等に対する謝金などに支出する。
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Research Products
(4 results)