2015 Fiscal Year Research-status Report
博物館と地域との連携を通じた災害の「記憶」「記録」の活用についての研究
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15K11948
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
田邊 幹 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (50373478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福留 邦洋 東北工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00360850)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域史 / 災害復興 / 博学連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館における災害資料を活用したツーリズムプログラム、博学連携プログラムの開発の準備段階として、江戸時代の三条地震や善光寺地震などに関する古文書等の調査を行い、十日町市内の旧商家宅等の旧蔵文書から善光寺地震や三条地震等に関する記録、書簡類を新たに発見するなどの成果を得た。このほかにも県内各地の旧家の古文書群の災害に関する資料を実見、調査した。また、これらの文書群には江戸時代における江戸や大坂の災害のかわら版や地震の状況を伝える古文書が多く含まれており、災害の情報、記録、記憶の遠隔地への伝達を表す資料として今後、検討していきたい。 また、学習プログラムの参考とするため、震災の記憶、記録を伝える実例として関東大震災やアジア太平洋戦争による戦災の記録、記憶、復興の記録、記憶が現在にどのように伝えられ、活かされているか東京、横浜の事例を含め調査した。 特に、戊辰戦争で大きな被害を受けた長岡、会津、二本松、白河等の都市における、戦災および復興の記録、記憶の伝承、活用について調査した。特に長岡では著名な人物が活躍したことも要因の一つと言えるとは思うが、他の都市にくらべて戦後復興の過程の記録、記憶が多く、顕彰の対象として広くしられている。なぜ、長岡が突出して災害の記録、記憶の伝承がなされているのか、今後の課題である。 また、現在行われている災害資料、遺産を活用した学習プログラムの実例は関係者への聞き取りとともに、新聞記事や広報用チラシなどの情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
県内の歴史資料所蔵機関における災害資料の調査は順調に進捗し、資料情報を蓄積してきている。また、三条地震、善光寺地震等の新潟県域に関わる歴史上の地震の資料だけでなく、大坂の宝永地震や江戸の安政地震、関東大震災など他地域で発生した災害の情報を越後に伝える資料情報も収集できた。また、戊辰戦争を中心に各地の戦災とその後の復興をどのように記録、記憶してきたかについての調査は予定通り進んでいる。 しかし、中越大震災にかかる学習プログラム復興基金への申請書等の公文書の閲覧は、復興基金の解散等の要因により当初想定していたよりも制限が厳しくかかり、調査できていないのが現状であり、また、当初予定していた研究協力者が人事異動により中越沖地震のメモリアル施設の担当となったため遅れている。 また、平成28年4月に熊本地震が発生したことに伴い、新しい災害の記憶と復興過程が生まれてきている。この記憶、記録がどのように伝えられていくのかを研究の視野に入れて行く必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降も県内の歴史資料所蔵機関における災害資料の調査を進め、資料情報を蓄積する。今後は考古、民俗等隣接分野の資料、情報も視野に入れ調査を進める。 中越大震災にかかる学習プログラムの実践例の調査については、公文書等の閲覧が難しいため、今後は広報用チラシや新聞記事から情報収集を進め、聞き取り調査とあわせ、これらのプログラムが参加者のみならず実践者(ほとんどの場合、被災者)へどのような効果があったのか検証していきたい。 上記の調査に加え28年度以降は実際に学習プログラムの開発に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
公文書等の閲覧が難しくなったため、データ入力のために想定していた人件費が未使用になった。また、当初は東北地方の調査を優先して行う予定であったが、関東大震災等に関連した関東地方への調査を優先させたため、岩手、三陸等、北東北地方への調査をすることができず、旅費に残額が出ている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
公文書のデータ入力の代替として、災害資料を活用した学習プログラムに関連する新聞記事の情報や広報用チラシの情報をデータ入力を進めるために人件費を活用する予定である。 また、28年度は上半期は北東北への調査を優先して行い、1月~3月ころには熊本地震における災害の記録、記憶の活用事例の調査も進め、旅費を効果的に使用する予定である。
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