2016 Fiscal Year Research-status Report
流域レジリエンスの向上を目指した教育プログラムの開発・運用・評価手法の確立
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15K11951
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 剛 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10432064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ローカルナレッジ / サイエンスナレッジ / 本有的価値 / 水圏環境リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
北上山系早池峰山を拠点とした東側斜面半径50km圏内にある河川のうち,本年度は,閉伊川と大槌川を対象とし,各流域の小コミュニティごとに源流域から河口域までの流域住民にとってのローカル資源,伝統的文化的な生態学的知識(ローカルナレッジ)をアーカイブした。具体的には,森川海とそのつながりの象徴である魚類に焦点を当て,流域住民に聞き取り調査を実施することで魚類に関する在来知を明らかにすることができた。さらに,陸上植物や土地利用についても知見を得,流域における在来知を多方面から明らかにすることができた。自然科学的な調査として水質,魚類の耳石等の化学分析を実施した。これらのデータにこれまで実施してきた沿岸域を含めた流域における調査によって明らかになった科学的データならびに筆者らが作製した水圏環境リテラシー基本原則(佐々木, 2011)をもとにサイエンスナレッジを整理し,水循環,生物多様性、水産業,農業に関する地域の内発的発展のための意思決定支援に有益な情報を提供するレジリエンスナレッジの構築に向けた研究を実施した。本年度は,「ローカルナレッジ検討会」と「サイエンスナレッジ検討会」の結果を撚り合わせ「レジリエンスナレッジ」構築を目指した。流域において自然災害や社会問題に立ち向かうことが出来る知識,技術をレジリエンスナレッジとして策定することとした。本研究では、レジリエンスナレッジは自尊感情や内発的動機付けを高める鍵となるものとして「本有的価値」と定義した。この「本有的価値」を基準としてレジリエンスを評価する尺度の開発に向けて取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記録的な台風による被害があり,調査の進行が危ぶまれたが、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
ローカル資源を活用し,レジリエンスを高める流域レジリエンス教育プログラムの開発,実践,評価をおこなう。流域レジリエンス教育プログラム開発,運用,評価に係るレジリエンス発達プロセスの解明では,これまで蓄積した水圏環境教育プログラムの実績をもとに,プロジェクトデザイン(ADDIEモデル)の手法を用いて実施する。その際,コミュニティにおける開発,運用時の運用者ならびに学習者の会話分析,インタビュー調査,アンケート調査により得られたデータをもとに,統計解析,SCAT分析,K―H coderによる分析を実施し,参画者がどのようにレジリエンスを発達させていくのかプロセスをモニタリングし,結果を公開する。地元小学生を対象とし,NPO,市民団体と連携して教育実践を行う。
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Causes of Carryover |
本研究では,流域レジリエンスを向上させるための水圏環境教育プログラムの開発・実践・評価を目的としており,次年度以降も水圏環境教育プログラムの実施によって流域レジリエンスが向上しているのかどうかを確認する必要がある。そのため,次年度以降も水圏環境教育プログラムを現地にて開催するための予算確保の必要性が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本計画では,次年度の5月,7月,10月,12月に現地に赴き流域レジリエンスを向上させるための水圏環境教育プログラムの実践を行う。その際,交通費として使用することとする。
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Research Products
(12 results)