2015 Fiscal Year Research-status Report
セシウム(Cs)低吸収変異体の解析による水稲Cs吸収メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K11956
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
頼 泰樹 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30503099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永澤 奈美子 (佐藤奈美子) 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00535289)
永澤 信洋 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (90599268)
高橋 秀和 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00325937)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セシウム / 放射性 / 水稲 / セシウム低吸収 / 吸収制御遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジ化ナトリウムおよびMNUを用いた突然変異誘発処理により得られたM3世代を、主にCdやZnなどが高濃度で存在する重金属汚染圃場で栽培し、玄米中セシウム(Cs)濃度が低濃度の突然変異系統を複数選抜した。 その中のCs濃度が特に低い3系統の突然変異体を2種類の土壌(大潟村;強グライ土 藤里町;黒ボク土壌)にCsを無添加、0.5ppm、1.0ppmとなるように添加し、ワグネルポットで栽培した。粘土含量の多い大潟村の土壌で栽培するとこれら系統の玄米Cs含量は、Cs添加の有無によらずコントールの10%以下でありCs吸収がほぼ抑えられていた。また、粘土含量が少なく、比較的水溶性Csが多い状態が維持される藤里町の土壌では玄米Cs含量は25%前後に吸収が抑制されていた。 これら3系統の遺伝子解析により、Cs低吸収の原因遺伝子の特定を試みた。これら3系統は変異の処理や外観形質などから独立に生じた系統であると考えられたが、各系統を交配したF1を用いた対立性試験の結果から、3系統のCs吸収に係る遺伝子は同一の遺伝子に起因するものであると考えられた。次にこれら3系統からDNAを抽出し、次世代シーケンサにより、ゲノム解析を行った。また、木村氏B液を用いた水耕栽培の実験系で、幼植物の根へのCs吸収が抑制されることがこれまでの研究により、明らかとなっているので、この実験系によりカサラスとの交配系統F2世代のCs吸収性により低吸収個体を選抜し、遺伝子マッピングを行った。その結果、Csが低吸収となる原因遺伝子は第4染色体に座上していることが明らかとなり、次世代シーケンスのデータと合わせて候補遺伝子の絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
選抜したセシウム低吸収の変異系統同士の交配による対立性試験により最大の課題であったセシウム吸収制御遺伝子が1つに絞り込むことができた。 これにより、この遺伝子が水稲のセシウム吸収について主要な制御を行っている可能性が高いと考えられる。残る課題はこの遺伝子がセシウム吸収を制御している証明として突然変異体への導入により形質転換体を作成し、セシウム吸収能の復帰を見ればよいとことまで到達しており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
変異系統へ遺伝子マッピングおよび次世代シーケンスによるゲノム解析の結果から絞り込んだ候補遺伝子の組み換えによる相補性試験により遺伝子の特定を進めている。問題点として突然変異体の形質転換効率が悪く、一度失敗しているため、現在培養するカルスの数を大幅に増やして形質転換体の作成を進めている。
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