2015 Fiscal Year Research-status Report
社会的コンフリクトの解決にむけた可逆的意思決定の有効性とそのメカニズム
Project/Area Number |
15K11963
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 俊明 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60302072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 洋一郎 慶應義塾大学, その他の研究科, 准教授 (70454395)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | NIMBY / 手続き的公正 / 高レベル放射性廃棄物処分場 / 合意形成 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,可逆的合意形成の有効性を理論と実証の両面から分析し,日本における有効性や導入条件を検討する.それにより,公共政策に伴う社会的コンフリクトを回避/打開し,効果的に合意形成を行うための方策を提案することを目的とする. この目的を実現するため,本研究では, 3つの研究課題を設定しているが,その1つが可逆的合意形成における合意メカニズムの実証的解明である.これは,フランスの高レベル放射性廃棄物処分場建設を題材に,建設予定地の住民と地元行政にヒアリング調査と質問紙調査を行うものである.調査では,「不確実性に起因した不安感をreversibilityの保証が解消し,当局に対する信頼感を高め、合意に至った」というreversibility仮説を検証する. 当初,秋口にインタビュー調査を実施し,春先に質問紙調査の実施を予定していたが,パリでのテロ事件を受け,半年ほどインタビュー調査を延期した.結果的に,2016年4月にインタビュー調査を行った. 調査の結果,①HLW処分場に関する一般国民の関心はさほど高くなく,reversibilityは一般国民にはあまり効果がないと思われること,②現地住民と反対派団体のメンバーには,reversibilityは効果が高かったこと,などが分かった.また,フランス政府が意思決定過程において,公正さの確保に多大な努力をしていることも分かった. これらの結果を受け,現在は質問紙調査の準備を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスでのインタビュー調査と質問紙調査は,テロ事件の影響を受け,半年ほど遅れている.しかし,安全性が確認できるまでの期間に,平成28年度実施予定の質問紙調査の準備を整えていたため,実質的な遅れはない.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは9月までにフランス人を対象とした質問紙調査を行う.これはweb調査として実施する予定である.一方,同時期に,東日本大震災の被災者を対象とした質問紙調査も行う.これにより,reversibilityが確保されていない場合における合意の構図を探る.最後に,両者を比較し,reversibilityの効果を検証する.
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Causes of Carryover |
フランスでのテロ事件により,当面の期間,フランスにおけるインタビュー調査を自粛したため.また,それを受けて実施予定であった質問紙調査も延期を余儀なくされたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査は,平成28年度にすでに実施した.質問紙調査は秋までに実施を目指し,準備を行っている.また,日本における事例を対象とした質問紙調査も年度内に実施予定である.そのため,今年度には予算は予定通り,使用される予定となっている.
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