2016 Fiscal Year Research-status Report
震災復興政策におけるマルチ・レベル・ガバナンスとメタガバナンスの作動の解析
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15K11977
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
新川 達郎 同志社大学, 政策学部, 教授 (30198410)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リスク・ガバナンス / 重層的ガバナンス / メタガバナンス / 復興まちづくり計画 / 協働(パートナーシップ) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、復興政策のガバナンス分析を行い、その背景にあるマルチ・レベル(重層的)・ガバナンスの構造と機能を解明するとともに、復興政策が必ずしも初期の目標を達成できていない状況を「ガバナンスの失敗」という観点から分析し、その回復メカニズムであるメタガバナンスの作動可能性を検証する。これによって、ガバナンス論及びメタガバナンス論の理論研究と応用研究の総合的な深化を探求することを第一の目的としてきた。そのために平成27年度に整理してきた被災市町村の「復興まちづくり計画」について、平成28年度はその分析を行い、その計画の進捗状況あるいは計画の成果についての資料を収集して解析を行ってきた。特に、東日本大震災の復興に当たっては、復興まちづくり計画の進捗状況の検証とその評価が被災後5年を経て本格的に始まっていることもあって、そうした情報の収集に努め、研究会等でも現状の報告を行ってきた。 理論面の研究としては、「ガバナンスの失敗」において「ガバナンス」を「ガバナンス」する「メタガバナンス」について、その理論の体系化を検討すること、さらに先行研究に見られる実証的な究明についてその応用可能性や妥当性を明らかにすることを試みた。そこでは、欧州における諸研究を中心にそのレビューを行ってきたが、その一部は研究成果として発表することができた。本研究のもうひとつの理論的な関心からはマルチ・レベル・ガバナンス状況をメタガバナンスする構造と機能についても検討を重ねてきている。震災復興ガバナンスが機能する政府間関係は、理論的には垂直的なマルチ・レベル・ガバナンスがトップダウン的にもボトムアップ的にも働くこと、さらには水平方向のガバナンスがパートナーシップ型で働くが、そのガバナンスの失敗においても同様の修復メカニズムが先行研究等からは理論的に要請されていることが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28 年度の研究計画は、ほぼ予定通り実施することができた。27年度の準備と調査研究を踏まえ、理論的な研究と現地調査の継続的な実施を行ったが、それに加えて震災復興の基礎データの収集を継続した。 理論研究の応用的側面としては、東日本大震災のガバナンス状況を内外の諸研究を踏まえつつ整理してきた。また現地調査としては、実証研究として復興計画の実施状況について継続的に観察を行った。宮城県東松島市と南三陸町については、重点的に調査を行ったが、同時に仙台市や登米市など後背地にあたる地域についても、水平的なガバナンスという観点から引き続き現場における視察やインタビュー調査、また市町の担当職員からの聞き取り調査を行った。なお、国、地方を通じての復興政策の重層的なガバナンス状況については、国(復興庁)、宮城県、関係市町のデータ収集および文献調査によって前年度資料の補足を行った。 平成27年度に資料収集を行った被災地の復興計画及びその事業計画について、2次的な分析を行うために事業成果の調査を行った。関係市町村の復興事業の進捗について網羅的に調査を行い、データベースをづくりを進めてきた。その調査と分析のために、前年度と同様に、宮城大学、東北大学、NPO団体等には研究協力を継続いただいた。またこれら協力団体が行う研究会、報告会、セミナーなどに参加して、本研究の中間成果について紹介しその時点での意見や助言をいただくことができた。なお各地方自治体の現状およびガバナンス研究に関する調査研究報告などの資料収集をすすめた。これらの作業のために大学院生による研究補助を活用し、研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29 年度の研究としては、理論的な研究と現地調査の補完を行い、研究成果のとりまとめを行うこととしたい。まず、東日本大震災の復興政策におけるガバナンスの失敗の諸要因を検出し、そのうえで、ガバナンスの失敗に関する理論と実証の総合的検討を行うことにする。そこでは復興政策のガバナンス状況を確認しながら、それらがマルチ・レベルの関係においても、またパートナーシップ関係においても不十分にしか機能していない構造を析出し、その機能様式を明らかにする。それらを踏まえて、ガバナンスの失敗を修復するメタガバナンスの機能様式やその成立可能性を考察する。 その機能様式を29年度において実証的に検証する研究として、ガバナンスの失敗仮説に基づく復興計画の実施状況の評価を行う。特に、宮城県東松島市、南三陸町については、現地調査を行い、補足的な聞き取りなどを行い、改善や修正の実態を明らかにする。また、国、地方を通じての復興政策のマルチ・レベル・ガバナンスについては、国(復興庁)、宮城県および関係市町への聞き取りと文献調査によって、その失敗を補う機能の把握を試みることとする。これらの収集資料と聞き取りなどアンケート調査の整理を行い、地方自治体復興ガバナンスとそのメタガバナンスを立体的に分析する。 これまで協力いただいた宮城大学、東北大学、地元NPO団体、関係地方自治体の関係者には、調査研究成果の解析及び理論的検討、本研究の結論についての報告を行い、最終的な研究成果の取りまとめに当たっての助言をいただくこととする。また本研究は、いったん終了するが、今後に向けてさまざまな研究課題が明らかになってきていることから、終了後の研究へのアドバイスをいただくことにしたい。なお、研究成果の集約のため、前年同様に、大学院生を中心とする研究補助者チームを活用する予定である。
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Causes of Carryover |
約220の東日本大震災被災地方自治体における復興まちづくり計画の収集とその実施における実績の調査を行い、データベースを作成するべく作業を進めていたが、対象が幅広く、データ収集が順調に進まなかったことから、平成28年度末までに終了することができず、次年度に残りの作業を進めることとした。そのために当該作業のための研究補助の人件費について次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
復興まちづくり計画の事業成果に関するデータ収集とその整理については年度の前半の早い段階に終了させ、本研究の取りまとめのための基礎データとすることとしている。そのため当該次年度使用額にかかるデータ収集整理の作業を新年度4月当初から計画的に進める予定としている。
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Research Products
(4 results)