2016 Fiscal Year Research-status Report
年金「所有権」の確立過程に関する国際比較研究~アメリカ企業年金を基点として
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15K11979
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 健三 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (80368844)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 受給権 / 企業年金規制 / 国際比較 / 年金システム / 確定拠出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な研究成果は次の二つである。 第1は、第 133 回(2016 年秋季)社会政策学会 全国大会における研究報告、「社会政策学会企業年金規制の国際比較~アメリカのエリサ法の影響力」である。これは、アメリカの企業年金規制を、国際比較の文脈に位置づけ、その国際的影響 力を分析するものである。企業年金規制の国際比較については、OECD や企業年金連合会 の報告書があるものの、それは事例紹介の列挙、あるいは外形的基準による並列的な記述に 終始する場合も少なくない。ここでは、世界に先駆けて成立したエリサ法の内在的論理を基 軸として国際比較の枠組みの構築を試み、翻って世界における同法体制の独自の位置と、そ の国際的影響力をより正確に分析していきたい。ここでは、これまでのエリサ法研究に依拠して、企業年金法の枠組みを、①没収リスク、②破綻リスク、③代理人リスクという三種のリスクから整理し、ヨーロッパを中心とした各国の年金規制体系を比較し、さらに世界銀行やOECD、EU基準などを近年の国際機関を主導とした収斂の方向性を分析したものである。 第2は、「企業年金規制の国際比較研究 ~エリサ法を起点として」である。これは前者の報告のうち、比較の部分に特化し、執行体制、個々の措置ではなく体系としての比較、実際の運用体制まで立ち入って検討を行ったものである。その結果、各国の年金規制には多様性はあるものの、1990年代の体系については、大枠としてはアメリカの「信託モデル」、ヨーロッパの「連帯モデル」といった枠組みによる把握が可能であることを示した。 確定給付型年金における受給権保護規制のあり方は、確定拠出型年金における年金所有権を実現する重要な基礎をなしている。その基礎の内実および動向の解明は、今後の所有権の比較研究のための橋頭堡としての意味を持つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、種々の事情による研究の遅れをある程度取り戻せたように思う。なお、ヨーロッパの動向整理、アメリカの実態の解明について、さらに深く解明される必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパの動向の精査およびアメリカにおける確定拠出型年金への移行についてさらなる理解が求められる。 前者については、2016年度に実施した現地調査を踏まえて、入手した資料などの精査、後者についてはトランプ政権の成立という大きな転換を踏まえて、現地におけるヒアリング、資料収集が必要であり、この点について研究を進めていく。 また進捗に応じて中国の年金システムの動向についても検討したい。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究の遅れの為。 当該年度では推進に努めたがいくつかの課題が残された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度と同様の研究推進を実施することで適正な予算使用が可能と考えられる。
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