2017 Fiscal Year Research-status Report
地域文化に根ざすNPO”ホームホスピス”の公共性と持続可能性
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15K11980
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
竹熊 千晶 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (20312168)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホームホスピス / 看取り / 地域ケア / NPO |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超高齢多死社会のなかで全国に広がりつつあるNPO”ホームホスピス”が持続可能なケア・システムとなりうるのかを検証することである。このホームホスピスの活動をケアの評価、「住まい」としての〈being〉と〈doing〉、医療・保険制度の経済的側面からの費用対効果から、地域社会の中での公共性と持続可能性を検証することが目的である。平成29年度は、近畿大学建築学部山口が建築の立場から行った全国28箇所のホームホスピスの環境調査をもとにさらに分析と考察を加えた。グループホームなどの福祉施設の調査も行った山口は、ホームホスピスを「利用者・職員・家族が水平関係にあること」、「地域資源の活用・開かれた住まい」などから「地域に開く」ということ、さらに「看取りを文化として捉える」などを抽出し、「日常生活の回復が高齢者の生命力を引き出していく」と意味づけた。一般的な施設では、施設内規則、物品の持ち込み制限、面会時間の設定、玄関の施錠があるのに対し、調査したホームホスピスには全くなかった。ホームホスピスは、1人の入居者に対して本人・家族による自助とホームホスピス内で行われるフォーマルなサービスとインフォーマルなサポートの組み合わせなど、生活支援サービスの付帯と外付けの地域資源の活用など、抱え込まない仕組みを持っていた。また地域住民との関係性においても、ホームホスピスの場合近隣住民の距離が非常に近かった。内部での日常生活が完結してしまう福祉施設でその規模が大きいほど地域との境界が強固であることが示唆された。しかしながら、制度にないホームホスピスは活動の継続が困難となったり、開設したいという思いがありながらも開設につながらないケースも出ており、継続しているホームホスピスがなぜ継続しているのかの分析をしていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
環境評価の点で、熊本地震による中断で、それまでのデータが使用不能になってしまった。しかし、一方で研究代表者も理事となっている全国ホームホスピス協会により、建築学的視点から全国28箇所のホームホスピスで環境調査がなされたことは、より学術的、客観的な指標となったのではないか。当初の予定の計画どおりではないが、実践的な研究であるため、実際に活動を行いながら新たな分析ができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
環境面については、建築学的視点からの調査がすでになされた。経済的視点からの介護の評価も先行研究としての文献をみつけることができた。それらのことも基盤にしながら、ホームホスピスの「公共性」と「持続可能性」について、質的な面からの調査を行っていく。研究代表者は実践者であり、全国のホームホスピスとつながりも深めている。5年以上継続するホームホスピスが、なぜ継続できているのか、各管理者に聞き取りを行う。またこれまで日本財団の助成によって行われた在宅ホスピスリーダー養成の事業助成を受けた人で、開設したくてもできないのはどういう要因があるのかをさらに調査を深めたい。平成29年度にホームホスピスの「公共性」について議論を深めてきたので、最終年度はそのことのまとめを行っていく。
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Causes of Carryover |
謝金・人件費を使用せず、共同研究者らとともに調査した。共同研究者らは、それぞれの旅費を使用した。自分たちで調査分析を行っているため、ほとんど人件費を使用していない。調査および成果発表のための旅費が多かった。
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