2017 Fiscal Year Research-status Report
組合せ最適化問題に対する乗算と浮動小数点演算を用いない高速大域最適化手法
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15K11990
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森 耕平 神戸大学, システム情報学研究科, 助教 (70359868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大域最適化 / 組合せ最適化 / 01二次計画 / MAX-CUT / 浮動小数点演算 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の大域最適化アルゴリズムの基本構造は,01のベクトルをGrayコード順に全探索しながら,可能なら探索不要な部分を計算せずに済ますというものである.この基本構造の下では代数計算の部分の計算効率の大幅な向上や浮動小数点演算や乗算を用いない実装が可能であり,また,空間計算量を事前に詳細に見積もることを可能にする. この性質は,アルゴリズムを走らせるプロセッサの種類についての制約を大胆に取り除くものであるという意味で実用上の可能性を秘めている.また,対象の問題がNP困難な中で極端にシンプルなものであることから,汎用の計算機における利用においても特に問題のサイズが小さなインスタンスを大量に解く場合の各種サブルーチンとしての意義がある.その反面,アルゴリズムの基本構造を保ったまま計算効率向上のための枝狩り(のようなもの)に利用できる性質に強い制約が課される. この枠組みの中で採用可能な数多くの枝狩り手法のうち,アルゴリズムのコア部分ではないもの(目的関数のデータ構造の特殊性を利用した雑多なもの)を用いた数値実験を行い,目を見張るほどではないものの,計算効率が向上することを確認した. また,本手法の原理の部分の売りの一つである「乗算を用いずに実装できること」と「問題のデータが整数ならば浮動小数点演算なしで実装できること」を,原理部分に留めずに実際に実装して計算効率が向上することを確認した.計算速度は大雑把に言って速度が2倍程度である.メモリの消費効率はきちんとは確認していない.なお,この過程で,結果として相当に特殊な形となるソースコードのメンテナンスにおいて注意すべきことの知見を得た. 研究の最もコアの理論部分の進捗としては,アルゴリズムの大枠をそのままに丁寧に整理することにより,探索を飛ばす深さを1段階増加させた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究が予定よりも遅れている最大の理由は,題材や目標が申請時や研究期間の初期段階に思っていたものよりも遥かに難しかったことである.他に,所属組織におけるイレギュラーな業務等ににとられる時間や労力が非常に大きかったことがある.
申請時のアルゴリズムの核の部分をおそらくほぼ限界まで整理して効率化したことと,応用面の考察や浮動小数点や乗算を用いない実装は概ね予定通りである.しかし,計算効率に最も強く効く枝狩り方法の部分においては枝の細かな部分の改善のみの成果であり,本質的な部分の芳しい結果は得られていない.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き計算効率に最も強く効く部分の解析と実験を続けるとともに,現在得られている材料を元に研究をまとめることを目指すつもりである.
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Causes of Carryover |
研究の進捗の遅れにより学会参加費や旅費としての出費が少なかったことが最大の理由である.他には国内学会が所属組織から遠くない場所で行われたことと謝金の対象となる業務を遂行するスキルを持ち合わせた学生を確保できなかったことも挙げられる.
研究の進捗状況や開催場所や時期によるが,学会参加関連費用(特に旅費)として,残額の大部分を使う可能性がある.また,性能を比較する対象や評価するプラットフォームとしてしてソフトウェアを購入する可能性もあるが,研究の進捗次第である.
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