2015 Fiscal Year Research-status Report
バーチャル・リアリティ空間に提示される「ひと」の実在感
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15K12039
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
寺本 渉 熊本大学, 文学部, 准教授 (30509089)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バーチャル・リアリティ / 他者の存在感 / 行動指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,バーチャル・リアリティ(VR)空間に提示される「ひと」の実在感の評価法の開発とその生起メカニズムの解明を目指すものである。複数人で1つのVR空間を共有して共同作業を行う場面では,課題を共有している他者が実在感をもって感じられることが作業効率や安全性を高めるうえで非常に重要である。しかし従来VR空間の評価は「場」や「もの」の観点でしか行われてこなかった。そこで本研究はVR空間に提示される「ひと」の実在感(ここでは臨(隣)人感)に焦点を当てた。 本年度は臨(隣)人感の行動指標,生理指標の開発を目指した。実空間でパートナーに対面した場面で観察されると考えられるいくつかの現象(対人復帰抑制,他者観察時の身体近傍空間の投影,ミュー波抑制)に関して,指標としての有効性を検討した。特に,実場面でどの程度安定的に生じるのか?その際の重要なパラメータは何か?に注目した。その結果,対人復帰抑制現象やミュー波抑制現象は,他者との社会的な関係性によらず安定して生じる現象であることが示された。一方,身体近傍空間の投影現象は,刺激の物理要因だけではなく,他者との社会的な関係性の影響も少なからずあることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は対人場面で生じるいくつかの現象が,実場面でどの程度安定的に生じるのか?その際の重要なパラメータは何か?に注目して検討を行った結果,ある程度来年度の研究につながる結果が得られた。そのため,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度有効性が明らかになった行動指標を用いて,臨(隣)人感創出にとってどのようなパラメータが重要なのかについて検討を行う。従来の臨場感研究では,(a)実物への忠実度,(b)3次元性,(c)動き情報の有無,(d)背景情報の有無,(e)音情報の有無などの影響が指摘されている。それに加え,代表者のこれまでの研究によれば(f)パートナーとの社会的関係性が影響を与える可能性も考えられる。そこでこれらの要因に注目して,臨(隣)人感創出に与える影響について検討する。
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Causes of Carryover |
実験の効率化のため,実空間における検討を中心に行ない,バーチャル・リアリティを使用した大規模な被験者実験を次年度にまわしたことが挙げられる。そのため特に物品費および被験者謝金に当初計画よりも少ない金額で本年度の課題を遂行できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は実際にバーチャル・リアリティを使用した大規模な被験者実験を行うことを予定しており,その分として使用する予定である。
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