2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative cognitive study on behavioral freedom in non-human animals
Project/Area Number |
15K12048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森村 成樹 京都大学, 野生動物研究センター, 特定准教授 (90396226)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 動物福祉 / 比較認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、動物の「自由」を実現する認知機能について、室内では実験的に、野生下では行動観察によって検討をおこなった。室内実験では、チンパンジーが自由に扉を開けて、隣接する運動場を出入りできる文脈で、自己の認識や他者の認識を調べた。扉に備えたボタンをチンパンジーが押すことで開閉操作ができた。その扉に、扉を操作するチンパンジーの自身の姿を写す鏡(自己鏡映像)やモニタ(自己ライブ映像)、あるいは反対側の様子(他者ライブ映像)が提示された。この結果、ボタンを押すという単純操作であっても、ボタンを押すチンパンジーとまったく押すことのないものと、個体差が見られた。扉の自己鏡映像については、一部の個体は自己指向的動作を示した。自己ライブ映像では、扉に近づくほど体の一部が拡大されるために自己映像と分かりづらくない、少し後ずさりすることで自己を確認しやすくなる。自己鏡映像に対する自己指向的行動をする個体と自己ライブ映像に対して、「後ずさり行動」を示す個体は、一部重なっていた。また他者ライブ映像については、ディスプレイだけではなく、身振りなど社会交渉の行動レパートリーの発現を確認した。加えて、野生チンパンジー(ギニア共和国)を対象に、森にカメラトラップを設置して、行動を記録した。チンパンジーがいつも水飲みをする樹木や、“板根叩き”と呼ばれる木を叩いてディスプレイや他個体とのコミュニケーションをおこなう樹木の前にカメラトラップを設置した。健常な大人は、板根叩きは手と足の両方を使う傾向があり、非力な子供は手のみ使った。健常なチンパンジーは、片手で枝をつかみ、反対の手で葉をちぎるというシンプルな方法で水飲み用の葉の道具を作った。一方、左腕に障害をもつ個体は、さらに複雑な手足の組み合わせで同じ目標を達成していた。一連の研究から、行動の柔軟性には物事の理解の深さ、複雑さが関係していることが示唆された。
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