2016 Fiscal Year Research-status Report
無臭ガスの情報コード化と知覚画像化(無臭ガス用カメラ)
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15K12060
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 無臭ガス / 情報コード / 画像化 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「無色・無臭の化学成分」と「その成分を認識する酵素」を実験にて検討し、次に高感度な無臭ガス計測へと展開する。さらにインクジェットプリンタを用い、無臭ガス成分での情報コード印刷を進め、無臭ガスを生化学的に発光や蛍光へと誘導し、高感度カメラで撮影することで、知覚画像化する。つまり無臭ガスを使った秘匿性の高い、化学的な情報コードシステムを構築すると共に、人では知覚できない無臭ガスを知覚化することで「新たな情報化社会」を創生することである。 28 年度には前年度の結果を踏まえ、他の無臭成分(コリンなど)及び酵素の選択を実施し、混合ガスでの相互作用を調べると共に、インクジェットプリンタを導入し、複数の無臭成分にて無臭情報コードの印刷を行った。前年度に無臭ガス成分である乳酸と乳酸酸化酵素の組み合わせ、また過酸化水素とカタラーゼの組み合わせを確認しており、同様な手法にて無臭成分であるコリンについて、コリン酸化酵素を利用した無臭ガス計測の可能性を調べた。また無臭ガスのコード化では、互いのガス成分が他のセンサに影響をしないことが重要である。各酵素はその立体構造で基質成分を構造認識することから、高い基質特異性が有するが、基質以外の成分が影響を示すかを実際の無臭ガス(複数種)とガスセンサ(複数種)を用いたところ、互いにクロストークをしないことを確認した。また、無臭情報コードを媒体に印刷するためにインクジェットプリンタにて、無臭ガス成分の印刷を実施した。実験では、複数の無臭ガス成分の溶液を対象にカートリッジ内に装填して、PC 制御を行うことで、無臭ガスコードの印刷が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素を用いたバイオセンサの技術は、化学成分を特異的に検出できることから、申請者がこの技術を利用し、開発してきた生化学式のガスセンサ(バイオスニファ)は混合ガス中でも、対象とするガス成分だけを検知できる。また、本センサ技術は嗅覚ではなく、体内での薬物代謝で機能する酵素を利用することから、人の嗅覚では知覚できないような無臭ガス成分を対象としたガスセンサの構築も可能である。そこで27年度には、乳酸、過酸化水素の2 種の揮発性成分について、乳酸酸化酵素(LOD)とカタラーゼについて、それぞれ無色無臭の乳酸ガスと、過酸化水素をそれぞれ検出できることを示した。この結果を踏まえ、28年度には同様な手法にて無臭成分であるコリンについて、コリン酸化酵素を利用したセンサにおいて無臭ガス計測の可能性を調べた。その結果、コリン酸化酵素を利用したセンサにて無色無臭のコリンの測定が可能であった。次に、無臭ガスのコード化では、ガス成分が互いに他のセンサに影響をしないことが重要であることから、基質以外の成分が影響を示すかを実際の無臭ガス(複数種)とガスセンサ(複数種)を用いたところ、互いに影響せずクロストークせず、選択的に検知できることを確認した。これは各酵素がその立体構造で基質成分を構造認識することに基づく高い基質特異性、つまり選択性を以って対象ガスを検出したことを意味する。他方、無臭情報コードを媒体に印刷するためにインクジェットプリンタにて、無臭ガス成分の印刷を実施したところ、複数の無臭ガス成分の溶液を利用して無臭ガスコードの印刷が可能であった。今後は無臭コード印刷したガス情報コードの認識(スキャニング)を確認し、無臭ガスの知覚画像化(可視化)へと展開する。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度では、開発した3種の無臭ガスセンサにて、無臭コード印刷したガス情報コードの認識(スキャニング)を実施し、また高感度CCDカメラを用いて無臭ガスの知覚画像化(可視化)を実施する。 28年度までに構築した無臭ガス(乳酸、コリン、過酸化水素)のガスセンサを利用し、インクジェットプリンタで印刷作製した無臭情報コードについて、ガス情報コードの認識(スキャニング)を実施する。実験では、3種の無臭ガスを検出できるように、センサプローブ(消耗品)を準備する。そして予め、3種の無臭ガスを印刷した媒体8パターン(3ビット)を用意し、3種の無臭ガスセンサがクロストークすることなく、独立に検知しながら8パターンをスキャニング(読み取り)できることを確認する。また、無臭ガスの知覚画像化として、高感度CCDカメラにて無臭ガスによる発光を撮影して、知覚化を実施する。無臭成分である過酸化水素は、ペルオキシダーゼ(HRP)の触媒反応にて発光試薬であるルミノールをエネルギー準位の高い状態へと励起する。この瞬時的に励起状態になったルミノールが基底状態に戻る際に、425nmの青色発光を発生させる。この発光を高感度CCDカメラにて画像撮影する。無臭成分である乳酸もLODでの触媒反応にて過酸化水素を生成し、同様にコリンもCODにて過酸化水素を生成することから、これら酵素をHRPと同時に利用することで、無臭の乳酸ガスやコリンガスにおいてもルミノール発光を誘導し、可視化する。実験では多孔体メッシュに、酵素(過酸化水素:HRP、乳酸:LOD&HRP、コリン:COD&HRP)を固定化し、この酵素メッシュをルミノール溶液に浸漬した後に、高感度CCDカメラの前面に設置し、無臭ガスに向けることで、人では知覚できない無臭ガスを発光にて知覚し画像化(可視化)する。
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Causes of Carryover |
28年度には無臭成分であるコリンについて、コリン酸化酵素を利用したセンサにおいて無臭ガス計測の可能性を調べ、コリン酸化酵素を利用したセンサにて無色無臭のコリンの測定が可能であった。また、無臭情報コードを媒体に印刷するためにインクジェットプリンタにて、無臭ガス成分の印刷を実施したところ、複数の無臭ガス成分の溶液を利用して無臭ガスコードの印刷が可能であった。各実験では創意工夫し、27年度に準備した光学系や化学試薬、機械・電気部品などを流用することで、センサの開発及び評価を行うことができた。29年度では酵素固定化に最適なポリマーを導入し、また画像化に向けた光学素子や各種の酵素群、化学試薬、機械・電気部品などを購入し、センサ素子の開発と特性評価を行うことから、当初の計画以上の費用支出が発生する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度では無臭カメラの開発を目指し、高感度な光計測系の利用を予定しており、光学計測において自家蛍光を抑制した酵素固定化ポリマーの導入、光学素子や各種の酵素群、化学試薬、機械・電気部品などを購入し、実施する。実験用設備としては現有設備である高感度分光器、ファンクションジェネレータ、高度ドラフトチャンバ、緩衝液冷却系、二重式暗ブースを用いて、既製品の光学素子や各種の酵素群、化学試薬、機械・電気部品などの物品費に支出し研究を進める。またこれまでの研究結果の国内外学会会議での発表や、学術論文への投稿費用にも充当する。また研究を加速するため、実験補助等への謝金にも支出する。
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Research Products
(1 results)