視覚認知情報と運動計画を推定するインタフェースの研究

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K12076
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 星野 隆行 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 講師 (00516049)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 表面筋電位 / 運動計画 / 事前活動 / 予備緊張 / 視空間

Outline of Annual Research Achievements

ヒトが認識した外部環境に応じて，運動計画によって生じる事前的な不随意の運動を計測し，（１）脳で計画している運動を運動開始前に予測すること，（２）生体内の神経系に学習された外部環境のダイナミクスをリアルタイムに推定すること，の2点に挑戦する．末梢器官であっても中枢神経系の制御ループ内に組み込まれているので，骨格筋などの“末梢器官には感覚・中枢神経系の予測的な信号処理がコーディングされている”という仮説が立てられる．この仮説に基づき実時間において中枢神経系の「予測制御」を事前予測することによって，非侵襲的なインタフェースでありながら，表面筋電位などの末梢器官の情報から脳内で処理される主観的な空間認識や意思・意図に近い情報が得られる．
階段昇降実験やモノとの接触実験を通して，手足がモノと接触する直前の主導筋の予備緊張，拮抗筋の拮抗動作，それ以外の筋肉の予備的な活動を表面筋電位から計測して，被験者が感じている実世界との相関を評価する．
被験者には視覚的な刺激入力を変化させながら段差昇降を繰り返し行わせ，このときの動作条件の違いに対応して変化する予備的な筋活動を抽出し，今後の実験対象としてスクリーニングした．表面筋電位の計測装置としてワイヤレス式の多チャンネルアンプを使用し，着地センサを用いた動作解析と同期させることで被験者が置かれら物理環境，筋電位および知覚心理量との関係性を調査した．また，本研究では実世界で実行可能な認知型インタフェース開発を目標としているため，表面筋電位から運動計画を検出する過程は実時間で実行可能であり，またヒトにフィードバックするという制約がある．そのため，逐次処理可能な予備緊張検出システムに関して検討した．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成27年度の研究を実施した結果，階段昇降時には膝関節伸展筋である内側広筋において着地前の事前活動が顕著に表れ，その持続時間は着地前100-200ms程度と長いものであった．この活動は着地衝撃を緩和させる役割をもつと考えられ，その振幅は段差高さに関連している，内側広筋の活動から予備緊張を検出するために，両脚の各筋活動を計測しこれらの位相により予備活動の発生時刻を推定できる可能性があることが分かった．しかしながら，ヒトにフィードナック情報を認知させるにたる時間余裕を確保することが困難であることも判明しており手法の再検討が必要である．

Strategy for Future Research Activity

筋活動に現れる予備的活動は着地動作，キャッチング動作，把持・持ち上げ操作など対象物と遭遇，接触する際に身体に掛かるであろう負荷衝撃を緩和しスムーズな運動を行う役割があることが考えられるので，これら動作についてもその際の予備活動の様態を調査する．ことのとき被験者の運動は，予測的に構築される内部モデルと視覚情報に左右されることが予想される．そのため，視覚刺激としてヘッドマウントディスプレイなどによる人工現実感（AR）技術を活用して，着地などの動作が実際の環境（段差）とすれた体験ができるような実験システムを構築する．これにより，筋活動の事前活動が視覚情報により操作可能であることを示し，これらの関係性を明らかにする．

Causes of Carryover

本年度は筋活動の計測だけで研究できる部分の実施をし，センサや視覚呈示装置を要する実験は次年度に伸ばしたため．
本年度研究により実験装置の要求性能の再検討をした結果，要求性能を満たす視覚呈示装置の販売時期が当初予定より遅れ納品が本年度中に実施困難になったため，次年度への繰り越しを行った．

Expenditure Plan for Carryover Budget

視覚呈示装置および呈示画像生成用コンピュータ（グラフィックボード）の購入を予定しており，8月納入予定である．また，この装置を利用した視覚実験のため共同研究を検討しており．実験および打ち合わせのため旅費等を計上する．
加えて，本年度および28年度中までの研究成果の発表のため，英文校正，投稿費用，旅費などが必要である．