2016 Fiscal Year Research-status Report
内耳蝸牛内電位駆動型の非常用電力体内給電システムの基盤技術開発とその評価
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15K12091
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
舘野 高 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00314401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 修一 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, 電子・機械システム研究部, 主任研究員 (70359420)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経工学 / 音響センサ / 多電極配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,生体内の80 mV前後の微小電位を利用して,体内埋め込み機器とその電源に電力を供給能な非常用体内システムの基盤技術開発を目指している.特に,本研究課題の基礎技術として,生体の組織・細胞内電位を実時間で計測し,電圧源および信号源として他の機器に供給する技術に拡張して,応用展開しようとしている.本研究課題の実施期間の2年目となり,昨年度に試作した細胞インターフェースとなる微小電極配列基板,および,音響センサ部のプロトタイプの特性を評価した.まず,大阪府立産業技術研究所の微細加工技術装置を利用して,大脳皮質に刺入するタイプの微小多電極配列基板(ミシガンプローブ)を試作し,その電気的特性を評価した.その結果,電気的に印加する刺激によって細胞組織を活動させる十分な特性を有していた.また,そのミシガンプローブとよばれる細胞インターフェースが,電圧および電流刺激によって神経活動を実際に誘起できるかを齧歯類動物の脳を用いて実験的に検証した. その結果,脳活動に応じて自家蛍光強度が変化する計測法を通じて,脳活動を実際に誘起できる結果が得られた.また,小型音響センサについては,粉末状の圧電材料を利用して,齧歯類動物に応用できるサイズ(1 cm×2 cm),および,周波数帯域の高い感受性を目標として設計し,同研究所にて,基板上に電極と圧電材料を一体化した音響センサ構造を製作した.その後,設計通りの特性を有しているかを評価した.実験結果は,共振特性が設計値と異なり,音響-電気的信号の変換後の出力値が十分に検出できるレベルに達していなかった.この点は,来年度の改善課題である.また,体内電力獲得システムの先行研究の回路構成を基に,回路シミュレータを用いて特性を数値計算した.さらに,その数値結果を基に,本課題に適する充電昇圧コンバータ回路を基板上に実装した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は,昨年度の実績に基づき,細胞インターフェースとなる微小電極,および,音響センサ部のプロトタイプのデバイスの変更点を考慮して,再度,大阪府立産業技術研究所内にある微細加工技術装置を利用し,それらのデバイスを試作した.
まず,細胞インターフェースとして,微細加工技術を用いて,シリコン基板を購入し,内耳および大脳皮質に刺入する薄型微小多電極デバイスを試作した.特に,マウスの大脳皮質の周波数応答構造に基づき,聴覚皮質の複数のサブ領域の部位を刺激できる多電極配列基板を製作した.その基板の製作後に,多電極の特性を計測した結果,電気的刺激によって脳活動を十分に誘発できる電極特性を有していた.また,実際に,マウスの生体脳を用いて,電気刺激を印加したところ,誘発誘発応答が自家蛍光イメージングによって得られた事から,脳刺激に十分な特性を有していた.
また,音響センサについては,昨年度の実績に基づき,粉末の圧電材料から電極を有する圧電素子デバイスをさらに小型化して製作した.その結果,音刺激に対して,圧電材料の振動膜は齧歯類の可聴域で応答する特性が一部のチャネルで得られたが,共振特性を示さないチャネルも存在した.また,出力電圧は,数値計算の推定値より小さな値しか得ることができなかった.これらの点は,次年度の改善点としてあげられる.さらに,体内電力獲得システムの先行研究の回路構成を基に,本課題に適する充電昇圧コンバータ回路の設計を行い,数値計算によりその特性を評価した.また,その設計回路を基板上に実装した.実装した回路の特性評価は今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,研究期間の最終年度に当たるために,各構成要素の完成度を高め,全体を統合システムとして機能させることを目指す.そのために,各構成要素について,残された下記の課題を解決する. 【細胞インターフェース】微小電極配列基板を再度試作し,実際の生理学実験に応用するために,各電極の特性を一定レベルのぱらつきの範囲内に抑える.また,電圧出力制御機器と接続するコネクタ,および,支持基板を製作し,一連のインターフェースの完成を目指す.実際に,大脳皮質の周波数応答構造に基づき,特徴周波数の異なる複数の脳部位を刺激する実験を引き続き行う. 【音響センサ】前年度試作した音響センサの評価結果に基づき,入力音に対して,さらに大きな出力電圧を得るために,デバイス試作を継続し行い,その後に,そのデバイスの特性評価を行う.複数の共振周波数をもつセンサを製作した後,その微小信号を増幅する信号処理部を回路として小型基板上に実装する. 【充電昇圧コンバータ回路】昨年度,設計した回路の構成に基づき,小型の基板上に回路を引き続き実装する.また,実装した回路の特性評価を行う.
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Causes of Carryover |
音響センサの特性評価の結果から,今年度製作した小型音響センサには,共振特性に設計値と実測値との間に乖離が生じている事が判明した.したがって,音響センサの再試作が必要となり,材料となるシリコン基板や圧電材料の購入費を次年度に確保しておく必要が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
小型音響センサの再試作を行うために,その材料費となるシリコン基板,圧電材料,および,増幅回路用の電子部品を購入する費用として,次年度使用額を利用する予定である.
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Research Products
(14 results)