2015 Fiscal Year Research-status Report
言語理解における文脈形成の脳機構の事象関連電位研究
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15K12096
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
杉本 俊二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50422811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 順生 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50114781)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語理解 / 文脈形成 / 意思決定 / 問題意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、言語理解時の文脈形成において、既知の文脈や問題意識に基づく旧情報と、逐次的に与えられる知覚内容に由来する新情報が統合されるときの脳の仕組みを明らかにすることである。現在までに、主節と従属節の主語が異なる題述構造文を提示した場合、旧情報の形成時において(具体的には係助詞「は」を伴う句の提示時において)、前頭近辺で陰性および陽性成分が増大することを観察している。この活動は、従属節によって与えられる新情報を統合するための既知の文脈(旧情報)の保持に対応した脳活動に関連している可能性がある。しかし他方で、提示された文章を理解する際には、聴取者の問題意識に応じて自発的に形成される文脈的な態度(判断)が脳波活動として大きく現れる可能性がある。この判断に関連した脳活動を特定する必要があると考え、内容的に同意できる/できない文を提示したときの肯定/否定判断に伴う脳波を観察した。その結果、提示された文章に対して否定的な意思を持つ場合には、左前頭を中心に陰性および陽性成分が増大すること観察した。さらに、肯定の意思を持つ場合にはガンマ波が一時的に増大すること、および肯定/否定の両判断以降においてベータ波が継続して増大することなど、脳波スペクトルにも特徴的な傾向が見られることを確認した。これらの結果は、言語理解時の文脈形成において、聴取者の問題意識/態度により脳波活動が大きく異なって現れることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、言語理解時の文脈形成において旧情報と新情報が統合される機構を探ることであった。しかし、与えられた文章に対して、聴取者がどのような問題意識(旧情報)を持ち、それに基づいてどのように内容を予測し、さらにどのように判断を下すかによって、その機構の働き方が予想以上に大きく変化することがわかってきた。そのため、当初の目的をやや迂回しながら研究を進めている状況であり、予定よりも進捗が少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、与えられた文章に対する聴取者の判断によってどのような脳活動が生じるかについて引き続き調べると同時に、聴取者が事前に持つ問題意識によって脳活動がどのように変化するかを具体的に調べ、言語理解時の文脈形成および意思決定に関連した脳機構について明らかにしていく予定である。
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Research Products
(4 results)