2016 Fiscal Year Research-status Report
コミックコンテンツを対象とした情報編纂技術に関する研究
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15K12103
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
松下 光範 関西大学, 総合情報学部, 教授 (50396123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山西 良典 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (50700522)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コミック工学 / 質問応答 / 探索的検索 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は,(1) コミックコンテンツのコード化における精度向上,(2) コミックコンテンツに対する対話的情報アクセス手法の拡張,(3) 構造化されたコミックデータの新たな利用法の検討を行った. (1) に関しては,2015年度にコミックのレビューを対象としてその記述的特徴からコミックを特徴付ける語彙群を自動で抽出した.ここで抽出された特徴語群にはキャラクター名や作品固有のアイテム名など,固有表現が多く含まれていた.2016年度は,こうしたコミックレビュー文中に存在する固有表現がレビューの特徴語群に及ぼす影響を調査し,コミックのトピックを把握する上で不要な固有表現を除去することでトピックの理解容易性を向上させる手法を提案した.提案手法では,Wikipedia とレビュー本文をコーパスとして,それらに条件付き確率場法(CRF)を用いた固有表現抽出器を適用し,得られた固有表現の出現頻度分布から認知度の低い語彙を推定して除外する.ユーザ実験を行った結果,改良前の手法を用いた場合に比べトピックの内容を正しく把握できていることが5%水準の有意差で確認された. (2) に関しては,2015年度に試作した探索的コミックアクセスシステムに,(1) で得られた特徴語群を組み込む改良を行った.また,コミックの内容構造をRDF形式で整理し,それを用いてシーン内に出現する漫符に着目したシーン検索システムを試作した. (3) については,コミック内容から関連する実世界の情報にシームレスにアクセスできる,コミックビューワ型のモバイルアプリケーションを試作した.このシステムでは,構造化されたコミックデータとWebpageやBlog,Instagram などのWeb情報とを紐付けることで,コミック閲覧時に気になった情報を,簡便な操作で確認できるようになっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今期の目標は,(1)コミックコーパスを活用したアプリの試作と,(2)コミック作品へのアノテーションの自動付与である. (1) に関しては,2015年度後半から取り組み始めたコミック探索システムの改良およびコミック質問応答システムの拡張を行った.コミック探索システムは,レビュー文を用いてシステムが自動的に付与したトピックを手がかりに,類似するコミックを渡りながら興味に合うコミックを探索するシステムであり,よりコミックの内容が推定しやすいシステムに改良できたことが被験者実験により確認された.また,コミック質問応答システムは,自然言語で記述されたコミックに関する質問を理解し,質問タイプに応じて適切なモードでユーザに回答するシステムである.これまでに実現されていた巻号に関する質問や定義に関する質問に加え,漫画固有の表現技法である漫符に着目することで,キャラクターの状況や感情状態によるシーン検索も可能になった.また,これらのシステムで利用するデータとして,コミック内容をRDF形式で表現し蓄積する枠組みを整備した.このデータ形式は特定のアプリを前提とせず,汎用性を企図して設計した.この応用例として,これらのデータとWikipediaやBlogなどのWeb情報とを紐付けることで,コミック閲覧時に気になった情報を,簡便な操作で確認できるモバイルアプリを試作した.これは計画段階では想定していなかった余剰成果である. また(2)に関しては,コミックレビューに特化した固有表現抽出器を作成し自動で抽出する枠組みを実装した.その結果,1000作品のレビューから,2000以上のアノテーション語彙が取得できた(F値=0.52). この他,コミック要素の部分的除去によるコミック要約システムの基礎検討,コミック表現を用いた興味喚起手法の基礎検討も併せて行った。これらから,当初の計画以上に進展していると結論づけた.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は,2016年度までに作成したアプリを改良・高度化し,より柔軟で複雑な情報提供を可能にする.また,ユーザ観察を通じて,それらのシステムの有効性を検証する.コミック探索システムに関しては,現在ネットワーク型の情報可視化表現を用い,各コミックのトピックは語彙集合を提示することにより表現している.これまでのユーザ観察から,これらの表現手法は一定の有用性を確認できているが,インタビューでは情報の視認性やトピックの直観性に関する課題が指摘されている.2017年度はこれらの問題を精査し,さらなる改善・改良を図る.質問応答システムに関しては,現在の実装は新しい質問タイプの追加に関する拡張性が乏しく,大規模な改修が必要になる点が問題である.この点を鑑み,より拡張性の高いモジュール構成を持つシステムへと改良を図る. また,アノテーションが付与されたコミックコンテンツの活用についても検討を進める.コミックの利用は,近年広告媒体での利用や学習教材としての活用などのように様々な用途に広まっており,構造化されたコミックコンテンツはそうした場面にも活用が期待される.本研究ではその一例として,登場人物間関係の抽出への応用や及びコミックを応用した言語教育支援システムへの適用を行う.
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Causes of Carryover |
研究分担者の山西が,研究スタート直後に予定以上の成果が得られたため,研究成果についてのデータ整理,および,研究成果を基にした関連実務経験者との人的ネットワーク形成にエフォートを割いた.このため,当初予定していた国際会議での発表を次年度に見送ることとしたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,本年度に得られた充分なデータと関連実務経験者から得られた知見を基にして,当初の予定以上にプレゼンスの高い国際会議での発表に繰越予算を充当する.この発表も含め,2017年度の予算は主に成果の対外発表のための旅費,英文論文執筆の添削代に利用する.また,本科研で得られた成果を発展させることを目的として,電子書籍の出版社の技術者から知識供与をいただく謝金として利用する.
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Research Products
(8 results)