2015 Fiscal Year Research-status Report
金色知覚の脳内処理経路における特異性の心理物理学・脳機能イメージング法による解明
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15K12125
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
内川 惠二 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00158776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅之 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (40336938)
吉澤 達也 金沢工業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90267724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金色知覚 / 質感知覚 / 感性心理学 / 感性情報学 / 人間情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、まず、金色の見えの色覚特性上の特異性を明らかにするために、予備的な心理物理学実験を行った。実験装置を製作し、光沢感をマッチングする実験手法を用いて、物体表面の色相が光沢感に及ぼす影響について調べた。コンピュータグラフィックスにより、3次元物体のテスト画像を作成し、液晶ディスプレイ上に呈示した。被験者は刺激を単眼で観察した。2つの刺激を並置し、一方をテスト刺激、他方をマッチング刺激とした。刺激の色は,赤,緑,青,黄のいずれかであった。テスト刺激の鏡面反射率は一定であった。被験者は、左右の刺激の光沢感が一致するように、マッチング刺激の鏡面反射率を調整した。実験結果から、鏡面反射率が等しい場合、赤と黄は緑や青よりも光沢感が高く知覚される傾向があることが明らかになった。 次に、28年度から行う視覚刺激観察時の被験者の脳波計測のための準備を行った。シールドルーム内での視覚刺激提示装置の設置、脳波計測器の整備、ダミー刺激を用いた脳波計測の実施を行った。また、次年度に行う視覚刺激作成のための準備を行った。想定される視覚刺激をコンピュータグラフィックスにより作成するためのプログラムの準備と運用を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、金や金色は文化的に特別な意味をもつことから、光沢感において黄色が特異的であることを予測した。実験結果は、黄色は緑や青よりも光沢感が高く知覚される傾向があることを示したが、予想に反して、赤も黄色と同程度の効果をもつことが明らかになった。光沢のある赤は銅色として知覚され、金属の光沢として金と同程度になじみがあるためにこのような結果になったことも考えられる。現状ではまだ予備実験的な結果であるが、以上のように、興味深い結果が得られつつある。28年度のさらなる精緻な実験に期待できる。 また、27年度は28年度の実験(脳波計測)の準備期間であり、脳波計測に必要な機器類の整備、実験室の準備、視覚刺激提示のための準備など行い、目的を達成するための実験準備は概ね整った。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、当初予定していたNIRSを用いた脳機能イメージング実験に代わり、より事件的な分解能が優れている脳波計測を行うことが主な目的である。そのために、心理物理学実験による金色知覚の特異性の解明に加えて、脳波計測のために最適な刺激条件を決めることを行う。 心理物理学実験では、特に、被験者が初めて刺激を観察した際は、光沢のある黄色の刺激は金を想起させ、明らかに他の色相とは異なる特異的な印象であるが、緑や青の刺激とともに黄色の刺激を繰り返し観察しているうちにその印象は徐々に薄れていく傾向があることを考慮して、馴化の影響を小さくするために、一人の被験者に対する試行の繰り返し回数は少なくし、被験者の数を多くするなどの工夫が必要である。 脳波計測では、金色知覚の特異性を考慮して、視覚領域だけではなく、頭頂葉や前頭葉を含めた領域までを計測対象とする。金色表面刺激とその他の刺激を被験者に呈示し、被験者は呈示された刺激の色名を応答する課題を行う。刺激は被験者が応答するまで呈示され、その後、灰色の背景が呈示された後に次の刺激が呈示される。被験者はこの課題を40秒間繰り返し、20秒間の休憩を挟んで、その後同様に課題と休憩を繰り返す。これを10回繰り返す。チャンネル毎に得られた計測値は前処理を行った後に、休憩毎の刺激呈示前の10秒間と刺激呈示後の10秒間の値の差から刺激呈示の効果をみる。以上の測定で有意差が出るチャンネルから金色表面刺激の特異性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
27年度に当初予定していた物品費と人件費の使用に対して変更が生じ、研究を効果的に進めるために、この変更額を28年度に用いることとした。そのために次年度使用額が生じた。変更理由は実験刺激を作成するためのプログラミング担当者の雇用が困難であり、予定通りにはいかなかったこと、また、プログラミング担当者が使用するためのコンピュータやソフトウエアの購入を行わなかったことである。ただし、研究自体は、実験刺激及び実験プログラムを他の方法により作成したため、概ね順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は実験刺激の作成を担当する雇用者を早期に確保すること、実験刺激の作成の環境を整えることのためにこの経費を使用する。これにより、28年度に行う心理物理学実験と脳波計測実験を早めに実行することにより、実験を効率よく進める計画である。
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Research Products
(8 results)