2016 Fiscal Year Research-status Report
セルアニメーションにおける顔振り動作の描画に関する分析 とモデル化
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15K12126
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 豪 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (00323832)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セルアニメーション / 顔 / 描画 / 軌跡 / 特徴点 / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の商業アニメーションは、半世紀に渡って独特な描画技法を発達させてきた。この描画技法は観ているものには特段の違和感がないものの、三次元的な幾何形状を仮定した場合、大きな歪みを含んでいるという高度に記号化された優れた表現法であると言える。本研究では特に顔の動きに着目し、どのような変形描画が多用されているかについて実際のアニメーションを収集し分析を行っている。 平成27年度までは、一作品の一人物の振り向き描写について3次元コンピュータグラフィクスと比較して分析を行ったが、平成28年度は、一つの放映作品で描かれている様々な登場人物の顔を対象として顔の方角知覚についての分析を行った。描かれている顔の方角の知覚に関して、表示された顔描画像が向いていると感じた方角を回答する方法で知覚する方角を収集し、アニメーションの顔画像に対して個人によらず方角を知覚できているかを調査した。同一画像に対して複数回回答した結果および、同一画像を複数名で回答した結果は、安定した方角知覚が行われていることを示した。 さらに、回答データを用いて、アニメーションの顔画像の方角知覚を回帰問題と問題設定し、深層機械学習により学習が可能であるかを実験した。人による回答と比べると、学習されたネットワークによる推定方角は振れが大きかったが、大局的には方角推定が行えるとの結果を得た。 本年度の成果は、昨年度までで明らかになった一連の振り向き動画像の直接分析ではデータ不足であるという問題の解決策として、多量の方角付きの顔画像を代わりに用いることで顔の振り向き描写に対してと類似した傾向分析を行うための準備となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、手により作画されて作られたアニメーション映像と3次元コンピュータグラフィクスにより作られた映像とで区別が付くことは知られていたが、その違いが映像中のどのような特徴に起因しているのかを個々の具体例ではなく、多くのシーンからの傾向として示すことは成されてこなかった。本研究では、顔面上の特徴点の軌跡間の類似性に着目した昨年度迄の成果において、その違いの傾向を可視化した。 しかし、さらなる研究のために、分析画像データの不足問題を解決する必要性が生じていた。そこで、アニメーションの顔描写一枚ごとに方角を付与し、その多量の顔描画画像を分析することを計画した。その多量の顔描画画像を分析することで、一続きの映像を分析することとは異なるが、顔の振り向き描写に対してと類似した傾向分析できるのではないかと考え、そのための準備を平成28年度は行った。 この分析画像データの不足問題は当初は軌跡の曲線近似により対処可能でないかと考えていたが、データの特徴から曲線近似は適切なデータ処理ではないことが判明した。その対策を平成28年度は行ったため、当初計画よりも進捗は遅れているが、一方で機械学習による知覚の模倣について試みるために利用可能な教師データを用意することができ、実際に機械学習を行うことができたのは有益な副産物であった。 また、描画された顔の人によって知覚される方角を付与する実験は、手描きのアニメーションの捉え方を調査する上で有効な手法であると考えられる。その手法を発案できたことも成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
データの不足問題を解決すべく準備を行ってきた顔の方角が付与された画像群を用いて、3次元コンピュータグラフィクスと異なる手描きのアニメーションの固有な歪みのある描き方について分析を行う。 28年度に着手した深層機械学習の性能を高められれば、顔の向いている方角の付与を自動化でき、データ量の増加に有用であるため、その試行を行う。 また、深層機械学習により学習されたネットワークが画像中のどのような特徴に基づいて顔の方角を推定しているのかをネットワークの応答を調べることにより調査できるか試みる。
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Causes of Carryover |
一昨年度の繰越分が、およそ次年度使用額として生じた。 当初の計画で予定していた被験者実験よりもデータの準備と分析に時間をかけているため、使用計画とは差異が生まれている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析のための高速演算機器の購入、実験の中間データの保存用機器の購入、成果報告の必要経として使用する。また、被験者実験の開始が遅れたため、研究期間の一年延長の可能性も考慮して使用する。
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