2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12132
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
長 篤志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90294652)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固視微動 / フーリエ変換 / ドリフト / マイクロサッカード / 絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,研究実施計画に示した「テーマ1)絵画を観察している際の固視微動の測定とモデル化」に関する研究を行った.まず,アイマークレコーダ(Tobii,TX300)を用い,300Hzのサンプリング周波数で,白背景中の注視点,ならびに絵画を60cmの距離で観察している際の固視微動の様子を測定した.絵画として,油絵,水彩画,版画からそれぞれ2種類ずつ選択した.画像の提示には,4Kモニタを使用し,実物と同じ大きさとした.12名の観察者がそれぞれの実験刺激を30秒間観察した.そして,データ中から固視の安定している時間帯を抽出し,フーリエスペクトルを算出した.その結果,固視微動の特徴に個人差が存在すること,そしてその個人差がいくつかのグループに分けられる可能性が示された.一方で,絵画の種類による固視微動の違いは明確では無かった.次に,実験刺激として絵画の空間周波数特性を変化させた画像を用意して同様の実験を行い,実験刺激の空間周波数特性と固視微動の関係性について調べた.フーリエ変換による周波数解析の結果,固視微動の中でもドリフト成分やマイクロサッカード成分において,刺激の空間周波数の違いによる影響が出る可能性が示された.これにより,ぼやけた画像を観察した際に,固視微動の性質の変化が引き起こされる可能性と,絵画への集中度などの観察姿勢が固視微動に影響を与える可能性が指摘できた.以上の実験結果より,絵画観察時における固視微動をモデル化するにあたり,導入が必要なパラメータの候補をあげることができた. また,研究実施計画に示した「テーマ2)無地の支持体観察時における動的ノイズの性質およびノイズ強度の推定」のための予備実験として,動的ノイズによる錯視の見えの変化に関する実験を平行して行った.この結果より,動的ノイズの種類とノイズに影響を受ける見えの関連性に関する知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,研究実施計画に示した「テーマ2)無地の支持体観察時における動的ノイズの性質およびノイズ強度の推定」に取りかかる予定であったが,その予備実験をするにとどまった.これは,テーマ1で得られた実験結果より,固視微動モデルに関わるパラメータが当初の予定よりも複雑であることがわかり,モデル化作業が遅れたためによる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,平成27年度に得られた実権結果から,固視微動モデルを提案する.そして,そのモデルの検証をする実験を行う.その後,研究実施計画に示した「テーマ2)無地の支持体観察時における動的ノイズの性質およびノイズ強度の推定」並びに「テーマ3)絵画観察時における動的ノイズの性質およびノイズ強度の推定」を実行する.これにより,平成29年度には,計画通り「テーマ4)実物の絵画,絵画写真,動的ノイズを付加した絵画写真の3つに対する印象評定」を行う予定である.
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