2015 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病における人工的膵臓刺激装置設計のための数理モデル研究
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15K12137
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安東 弘泰 筑波大学, システム情報系, 助教 (20553770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 寛太郎 東京理科大学, 工学部, 助教 (00557704)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / 力学系理論 / 発火パターン / イオンチャンネル |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病の新しい治療法を開発するために、糖代謝(インスリン分泌)に関わる膵β細胞のダイナミクスを数理モデルを用いたシミュレーションにより解析した。特に、膵β細胞の1細胞に関する実験で観測されていた発火パターンを再現する目的において、グルコース(糖)による外部刺激ではなく、細胞膜に存在するイオンチャンネルのコンダクタンスを調整することにより、ダイナミクスを制御可能なことを発見した。これは、糖の量に応じてインスリンを分泌するという機能が低下している細胞においても、代替的な方法によってインスリン分泌を促進することができうることを示唆するため、糖尿病治療への応用という観点から重要な結果といえる。また、シミュレーションを行った数理モデルのダイナミクスを力学系的視点から解析することにより、発火パターンの数理的な構造を明らかにした。これにより、どのイオンチャンネルがより頻度の高い発火を引き起こすかを判定することができた。 また、この他、膵β細胞がどのようなネットワーク構造をもつことで、その電気的信号を素早くネットワーク全体に行き渡らせることができるかという問題意識のもと、ネットワークの位相構造に対するネットワーク上でのダイナミクスの解析手法を提案した。提案手法の有効性を調べるために、様々な実世界のネットワークにおいて大規模なシミュレーションを行い、提案手法が既存手法よりも優れていることを示した。 これらの研究実績は、査読付き国際論文誌2編、査読付き国際会議論文1編にまとめて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病治療のための膵β細胞の発火パターンの制御手法を提案するという目的のもと、細胞表面のイオンチャンネルのコンダクタンス制御により、単一細胞の発火頻度の調整が可能であることがシミュレーションにより確認できた。この制御法は電気的刺激にも関わりうるため、初年度の結果として重要である。さらに、ネットワークの構造解析に関する研究を行うことができたため、膵β細胞のネットワーク上でのダイナミクスを研究する上で有用な方法の提案に至った。これらの成果により、2年目以降の研究をより加速する形となったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、まず実データに基づいた数理モデルの改良を検討する。特に、単一の膵β細胞に関する実験結果や生理学的知見を連携研究者から提供してもらえるため、実データによるモデルの妥当性の評価が次の論文に繋がると考えている。さらに、その結果を踏まえて、正常でない細胞やネットワーク構造を踏まえた細胞刺激のためのアルゴリズムの構築を数理モデルベースで進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
年度途中で、当初予定になかった旅費支出があり、研究費に不足が生じた。そのため前倒し支払申請を行ったが、その申請時に不足額が不明であったため、前倒し支払申請額を余裕をもって行ったため、その分が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の交付額と合算して,計画的に使用する予定である。本残額は、数理モデルのシミュレーションのための消耗品購入に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)