2015 Fiscal Year Research-status Report
3塩基ユニット複製に基づくダーウィン進化するRNA生命モデルの構築
Project/Area Number |
15K12144
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
川村 邦男 広島修道大学, 人間環境学部, 教授 (50204772)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | RNA / 化学進化 / オリゴヌクレオチド / 複製反応 / 鋳型指示反応 / 生命の起源 / RNAワールド / トリプレットコドン |
Outline of Annual Research Achievements |
3塩基をユニットとする鋳型指示反応を土台として,変異をともなう複製系を構築し,RNAのランダム生成反応および選択過程と結合することによって,自発的に進化するRNA生命システムを構築することを目標とした.このために以下の3項目について検討した. (1)RNAの生成を促進する手法として,180℃以上で溶融したグルタミン酸中でヌクレオチドモノマーからRNAが生成するかどうか検討した.この結果,シチジン5'-モノリン酸の重合を試みたが,オリゴヌクレオチドは得られなかった. (2)3ユニット鋳型指示反応の前段階として,5'-末端にリン酸基をもつ6鎖長からなる4種類のホモオリゴヌクレオチド(pGGGGGG,pAAAAAA,pUUUUUU,pCCCCCC)について,それぞれ相補的な塩基からなるホモオリゴヌクレオチドを鋳型とする系について,6鎖長オリゴヌクレオチドの伸長が起こるかどうか検討した.縮合剤として,水溶性カルボジイミドを用いた.生成物は高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し,各成分の分析条件を最適化した.Gをからなる原料オリゴヌクレオチドおよび鋳型オリゴヌクレオチドは水中で4量体構造を生成するため,90℃以上で3分間処理した.この温度条件も検討したが,鋳型がDNAの場合には完全には解離しなかった.生成物を標準オリゴヌクレオチドと比較したが,現時点ではオリゴヌクレオチドが鋳型指示反応によって伸長した証拠は得られなかった.この原因として,原料オリゴヌクレオチドおよび生成物が鋳型と会合体を生成し,生成物の検出ができなかった可能生が示唆された. (3)そこで,上記と同様の6鎖長からなるオリゴヌクレオチドで3'-末端のみをRNAとすることによって,酵素処理を行い生成物を識別する方法で同様に反応を行い分析を行った.今後さらに詳しい分析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNAワールド仮説が正しければ,化学進化の過程でRNAが複製するステップが効率的に進まなければならない.これを化学進化的に検証するために,従来は,1塩基をモノマーユニットとするRNAの鋳型指示反応を構築し,さらにそこを土台として複製系を創ることを,我々のグループを含めて試みてきたが,だれも成功していない.我々の研究によって,この原因は鋳型指示反応の際のスタッキングが十分に働かないため,3鎖長以上程度のモノマーを用いればRNAオリゴマーが生成することが予測された.そこで,本研究では3塩基ユニットをモノマーとして,鋳型指示反応を行うことによってユニバーサルな複製系を構築しようとする課題である. この研究に至るまでにも,鋳型指示反応を可能にする様々な条件を探索してきたが,それらの過程では鋳型指示反応が進行する良い条件は見つからなかった.このように本反応は,一筋縄ではいかない難しい条件探索を含んでいる.また今回は,前段準備として6鎖長ユニットをモノマーとする反応を第1に試みた.我々の研究では,鋳型の非存在下でのこの種の反応ではRNAオリゴマーが環化することが分かっているが,今回は6種類のオリゴヌクレオチドにおいても環化は検出できなかった.これは,鋳型が存在することで生成物が鋳型から解離していないことなどの分析に関する問題と,反応自体が進んでいないという2点の問題が推測される.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,下記の通り,主に反応条件を網羅的にリストアップしそれを検証するという方法で研究を促進する. (1)本来の目標である3鎖長モノマーを準備して反応を行うなど,RNAの配列を考慮して研究を進める予定である.(a)当初の目的であった3塩基ユニットをモノマーとする反応系の検討,(b)3塩基ユニットに対して1塩基ユニットのモノマーが不可する反応の検討,(c)1種類の塩基からなるオリゴヌクレオチドだけではなく,4種類の塩基を含む系の検討,(d)温度条件の検討,(e)粘土などの鉱物触媒を用いる反応,などを検討する.これらを促進するために派遣会社を通じて,研究補助員にルーチンの実験をお願いする予定である.
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Causes of Carryover |
本研究では,オリゴヌクレオチドの反応とその分析のための装置および消耗品,ならびにこのための研究補助員を派遣会社を通じて雇用したことが主な研究費の支出であった.派遣会社を通じての3月分の支払(6万円程度)が完了していないために,残額が生じた.これを除くと,残額は2万円弱である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
派遣会社への支払残額にあてるとともに,研究遂行に必要なオリゴヌクレオチドと分析用の試薬及び器具等の一部を購入する予定である.
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Research Products
(6 results)
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[Book] Chapters “Activated Nucleotide”, “Nucleotide Phosphirimidazolide”, and “Oligonuleotide”, in “Encyclopedia of Astrobiology”, Eds. by M. Gargaud, W. M. Irvine, R. Amils, J. Cernicharo Quintanilla, H. J. Cleaves, D. Pinti, D. Rouan, T. Spohn, S. Tirard, M. Viso2015
Author(s)
Kunio Kawamura
Total Pages
2763
Publisher
Springer