2015 Fiscal Year Research-status Report
器官4D計測を起点とした初期脳形態形成の多階層ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
15K12147
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大塚 大輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (40632865)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織変形動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
器官形成過程は分子、細胞、組織動態という異なる階層が相互作用しあう複雑な現象である。これまでの発生遺伝学や分子生物学的手法を用いた解析により、分子、細胞の階層においては多くの知見が集積されてきた。しかし、よりマクロな階層である組織動態に関してはほとんど手つかずの状態であった。本研究課題ではこれまでのボトムアップ的アプローチではなく、組織変形動態から細胞現象や分子の働きに迫るトップダウン的アプローチによって器官形成機構の解明を目的として研究を行う。 本年度は多光子顕微鏡を用いてニワトリ初期脳形態形成過程、特に眼胞の突出過程に焦点を当てて、定量的計測を行った。計測により得られたデータから変形パタンの抽出を行ったところ、組織一様的な体積増加と一方向性の異方的組織伸縮を示すことがわかった。また、眼胞突出前に細胞増殖を阻害しても眼胞のサイズは小さくなるものの、突出は正常に起こることから、一方向性の異方的組織伸縮が眼胞突出過程に重要な役割を果たしていることが示唆された。次に、一方向性の組織伸縮を引き起こす細胞挙動についての解析を行った。細胞増殖が関与しない組織の伸長を引き起こす細胞挙動としては以下の2つの可能性、1). 細胞自体の異方的成長、2). 細胞の配置換えが考えられた。眼胞突出前後での細胞形状の解析を行った結果、組織伸長を説明することができるほどの変化は認められなかったため、細胞形状の変化の可能性を排除することができた。現在は細胞の配置換えについて検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り研究が行われている。今年度は組織変形動態の計測と得られたデータから特徴的な組織変形パタンを抽出することができた。その中でも組織の異方的な伸縮が眼胞の突出過程に重要な要素であることがわかった。これを足がかりとして、細胞、分子の階層でどのようなことが起こっているのかを調べることが可能であり、今後の研究を進めるうえで重要な発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究を進める。今年度の結果から眼胞の突出過程においては細胞の配置替えが重要な役割を果たしていることが示唆された。来年度はタイムラプスイメージングにより実際に細胞の配置替えが起こり、その結果として組織の伸長が起こっているのかを調査する。また、この配置替えに関与している分子の調査も行う。
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Causes of Carryover |
今年度は主に組織変形動態の計測および得られたデータからの特徴量抽出を行い、組織変形動態に関する重要な情報を抽出することができた。一方、細胞、分子動態に関する実験には手が回らなかった。次年度に組織変形動態に関与する分子、細胞挙動を調査していく実験を予定しており、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はより分子生物学的な実験が増えるため、消耗品 (有精卵、免疫染色等のための抗体) の使用額の増加が考えられる。また、脊椎動物の器官形態形成において、新規の発見があり、学会での発表、および学術誌への投稿を考えている。
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