2016 Fiscal Year Research-status Report
テーラーメイド教育のための多様なセンサーを用いた学習支援
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15K12172
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
黄瀬 浩一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80224939)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | テーラーメイド教育 / 視線解析 / アイトラッカ / 眼電位法 / TOEIC / 長文読解問題 / 多肢選択問題 / 主観的高難易度語 |
Outline of Annual Research Achievements |
視線解析を中心として,以下の3つの業績を挙げた. (1) TOEICスコアの推定:TOEICの長文読解問題(Part7)を対象として問題解答時の視線を解し,TOEICスコアを推定した.具体的には,他の被験者による視線データが存在する問題(既知問題),そのようなデータが存在しない問題(未知問題)の双方について対象とした.その結果,既知問題については2問の視線データを用いて33点の平均誤差,未知問題については6文書を用いて65点の平均誤差により点数を推定可能であることを示した.これは,TOEICの試験や模試を2時間かけて受けることなく,少数の問題を解くだけでTOEICの点数が瞬時に分かることを意味しており,英語能力のモニタリングや勉強の動機付けに有用であると考えられる. (2) TOEIC多肢選択問題を対象とした確信の推定:TOEICの短文穴埋め問題(Part5)を対象として問題解答時の視線を解析し,被験者が自信をもって回答したか否かを推定した.その結果,90%の精度で確信の有無を推定できることを示した.これにより,確信なく偶然正解した問題を復習の対象に含めることができ,さらに確信をもって回答したにもかかわらず間違った問題について優先して復習することが可能となる. (3) 主観的高難易度語の推定: 英文を読む際の視線を解析することにより,被験者が難しいと感じる単語(主観的高難易度語)を抽出する手法を開発した.ほぼすべての高難易度語を検出するとき(Recallが99%),推定精度(Precision)として33%を得た.これは,英文を読むだけで自分自身にとって難しい単語のリストを作成可能であることを意味する.新に高難易度である語は出力の1/3であるが,これに基づいて問題を作成し,復習することの障害とはなり得ず,むしろ有効であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要で述べたように,英語の学習を対象として,学習者の知識や問題点を把握する様々な手法を開発した.これらの手法の精度は,研究当初の予測を上回るものであり,テーラーメイド教育に有効な手法となり得るものと考えている. 一方で,これらの成果は学習者の状態をセンシングすることにとどまっており,学習をサポートする環境やサポートの方式については,完成するに至っていない.この主な理由は,学習者の状態をまとめて計測可能なセンサークラスルームを構築することに,特に,場所の確保やセンサの選定に,予想以上の時間がかかったことによる.現在,両者は完了している.具体的には,学習者10名が同時計測可能な小規模クラスルームを作成し,そこに,本研究で用いたアイトラッカを含めて,多様なセンサを配置し,学習者の計測を可能としている.あとは学習サポートを可能とするシステムとして組み上げるだけである.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2点について研究を推進していく. (1) センサークラスルームを用いた学習者の計測と学習補助: 学習者を計測しその結果を学習者にフィードバックすることによって,個人適合した学習を可能とする.具体的には,TOEIC点数の推定,多肢選択問題解答時の確信度の推定,主観的未知単語の推定を行うシステムとして実現する.その上で,このようなテーラーメイド学習を用いる場合と,従来の一般的な学習法を比較し,テーラーメイド学習の有効性を実証する. (2) 上記のセンサークラスルームは学内にあって機動性,柔軟性に優れているが,一度に計測可能な学生の数が10名と小規模に留まっている.より大規模な環境で手法の有効性を実証するため,(株)リクルートマーケティングパートナーズが運営するスタディサプリラボ(新宿にある大学受験生を対象とした学習施設)の協力を得,学習者の負担にならない簡単な手法について,大規模なデータ収集や解析を行う予定である.具体的な規模としては50名程度を考えている.
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Causes of Carryover |
本学との交渉により,テーラーメイド教育のための学習支援を実践する環境構築が可能となった.具体的には,多様なセンサーを備えた教室を作成するための場所の確保,机や椅子などの購入のための金銭的支援が得られることとなった.そのため,今年度に実施予定であった実験を次年度に延期し,規模を拡大した上で実施することとした.これによって,より説得力のある実験を行うことができ,成果をより意義のあるものとすることが期待できる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越す資金は,上で述べた実験のためのセンサ購入や謝金などに主に利用される.現在,すでに教室の整備はほぼ完了しており,追加でいくつかセンサを購入すれば,あとはデータ取得を行うことができる.規模の大きな実験のため,このための謝金が大きな支出となる.
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Research Products
(12 results)