2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12192
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
張 代洲 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (90322726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 弘美 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30326491)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物質循環 / 微生物 / 雲水イオン化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,空中の液体中において微生物の代謝活動がイオン化学反応に与える影響を評価することである.平成27年度には、雨水中に含まれている微生物の濃度と生存状態の測定方法を確立し,その方法を利用して異なる総観気象の変化に伴う雨水中の微生物の量と生存状態を定量的に評価した.また,培養・単離・遺伝子解析を利用して,微生物の組成も求めた. 方法の確立として,実験室内での検討実験及び野外観測への応用試験を通じて,汎用のDAPI染色法をコントロールし,LIVE/DEAD染色キットを用いた雨水中の微生物の濃度と生存状態の測定法を検討した.その結果,雨水中の微生物の検出率は平均109%であった.また,Glutaraldehydeを用いた固定試験も行い,検出率が平均約6%向上したことを確認した.但し,雨水の量が少ない場合において,誤差は大きかった.分析結果の正確性を保証するために全てのサンプル分析に対してブランクフィルターの分析は必須であることが分かった.確立された方法を利用して,移動性低気圧,梅雨及び台風の降水中の微生物の測定を行った.その結果,移動性低気圧の雨水中には微生物の濃度が高く,生存率が低いことが,台風の雨水中には濃度が低く,生存率が高いことがそれぞれ分かった.実施した培養・抽出・遺伝子解析実験の結果,移動性低気圧の雨水中には土壌系の微生物が大量に存在することや,梅雨の雨水中には大陸性と海洋性の微生物が混在すること,また,台風の雨水中にはほぼ海洋性のものが主導していることが分かった. 鉱物添加実験を試験的に行った結果,添加し培養した数日後に,常に単一な微生物の成長が見出された.また,平成28年4月現在,遺伝子解析による成長した微生物の同定を行っている.微生物の変動とイオン成分の関係については明確な関係をまだ確認していない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究内容は大きく分けて次の2つを予定していた。(1)春季黄砂の飛来に伴う降水を採集し,その中の細菌を培養・単離・同定する。(2)ゴビ砂漠で採集した砂サンプルから作った黄砂溶液に,(1)で取得した細菌株を添加・培養し,細菌のセル濃度の変動と溶液中のイオン成分濃度の変化との関係を考察する. (1)については,既に応用までの方法を確立し,春季に限らず通年の観測を実施した.その結果についての論文を1篇投稿中であり,さらにもう1篇の論文がほぼ完成しており,近い内に投稿する予定である.(2)については,添加後に微生物成長の再現性が低い.原因を究明するために,添加試験を繰り返し実施中である.
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Strategy for Future Research Activity |
雨水の観測に合わせて,平成27年度実施内容(2)のように培養実験と添加実験を繰り返し,溶液中のイオン濃度の増減と微生物の増殖(代謝活動)の関係を調べる.コントロール実験(対照実験:添加と培養条件-温度・日照-の検証)も含めて繰り返し実施することによりイオンの溶出に適する条件を探し出す.その条件は,大気中において生じる可能性を評価する.これらの実験で得られたデータと情報に基づいて,降水中の微生物の代謝活動とイオン成分(特に鉄)の濃度変化との関係について結論的な見解を取りまとめ,学術論文としてまたは学術討論会において研究成果を発表し,雨水中の物質変化について新たなメカニズムを提案し,それを検証するために,関係分野の専門家と連携して新たな研究計画を起案する.
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Causes of Carryover |
(1)遺伝子解析をまとめて実施するために、外部委託解析を平成28年4月に委託した。 (2)平成27年度中に予定された野外集中観測は、移動性低気圧と梅雨による降雨をターゲットにするために、平成28年5月-7月に実施することに変更した。その観測用の消耗品費と、その観測の準備及びサンプル分析補助用の人件費・謝金は平成27年度中に未使用でした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
委託代:既に解析を外部に委託した。 消耗品費:平成28年5月現在集中観測用の消耗品を既に発注した。 人件費・謝金:野外観測は平成28年5月末から7月末までに実施する予定で、その観測の準備(平成28年5月)に使用する。
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Research Products
(9 results)