2015 Fiscal Year Research-status Report
放射線生体影響数理モデルの放射線生物学・放射線防護・治療への展開
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15K12204
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真鍋 勇一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50533668)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
「WAM モデルの汎用性を確認する。モデルパラメータを対象としたゲノムの大きさ等と関連付け、パラメータの意味を探る。」について:数理モデルに使用したパラメータと生物学の定数との関連性を研究した。その結果、集団遺伝学で良く知られている中立進化速度10^{-9}/塩基/年とショウジョウバエとマウスのモデルパラメータの桁が一致することが分かった。その結果、これらを基礎として、多くの種に適用出来る足がかりをつかむことが出来た。 「ヒトの線量・線量率効果係数の推定」について:自然突然変異が倍になる線量である倍加線量と言う概念は放射線生物学で良く知られた概念であるが、これまでに知見によるとヒトとマウスの倍加線量はをほぼ同等であることが知られている。そこで我々はマウス実験の結果から決定されたモデルパラメータを使ってヒトの突然変異の上昇比率を計算した。その結果、毎年 10 Gyの一定の人工放射線で被曝した場合の突然変異発生頻度は被曝しない場合の2倍になることが分かった。他にも毎年1 Gy, 0.1 Gy, 0.001 Gy の場合を調べたところ、1.1倍、1.01倍, 1.001倍になることが分かった。これにより、線量・線量率効果係数は定説のような定数ではなく、線量率によりかなり異なり、線量率によって変化する連続関数である可能性が示唆された。 この結果は放射線防護を根本から見直す指標と成りえる。 「分割照射の定式化と応用」について:WAM理論の数学形式を使い、放射線の照射を断続的に行った場合の数式の定式化を行い、マウスの場合のパラメータを使って突然変異発生頻度の経時変化を具体的に計算した。また、ガンの放射線治療の場合は高線量率での照射になるが、その場合は、現在WAM理論で考慮しているものとは別の要因、高線量率照射による致命的な破壊を考慮する2成分理論を構築する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「より多くの生物種(植物、動物、細菌等)の実験データへのWAM モデルの適用」について:これまでに5種の生物のパラメータについての進化速度との関係付けは行ったが、適用する適切なデータが今年度2月まで見つからず新規の種への適用は出来なかった。この原因は既存の重要な物理量(今回の場合は中立進化速度)との関係付けがより重要であると思われ、集団遺伝学という新規の分野の学習にやや時間がかかったためデータの検索をする時間が十分に取れなかった。 「ヒトの線量・線量率効果係数の推定」について:突然変異発生頻度の推定を実施したが、放射線誘発の癌へのデータへの適用が出来なかった。癌の発生のメカニズムが未知の部分が多く、突然変異発生とがん発生を比例するとしてとにかく計算してみるという方法も可能性の一つとして考えられたが、癌と突然変異の関係に余りにも多くの説があり、適用に踏み切れなかった。今後は癌と突然変異の関係についてより詳しく調べる必要がある。 「分割照射の定式化と応用」について:現状の数学形式で分割照射への応用は容易であることが分かったが、高線量率照射による大きな損傷と低線量率照射による損傷には質的な違いがあることが示唆されるデータが見つかり、2成分理論の構築が今後の課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
集団遺伝学については比較的近距離に遺伝学の専門家がおり、1~3月に複数回議論の場を持ったところ、研究に参加してくれることなった。これによって集団遺伝学について無知である部分も専門家の力を借り、理解が促進されることになると考えられる。また、理論物理学の計算能力に優れた人物(核物理計算部門)が研究に興味を示し、研究に参入してくれることとなった。定年後、比較的近距離の大学に非常勤の職に就いた人物である。元来の計算能力が高い上に、非常勤の職に着くと言うことで比較的時間があり、協力を得ることで研究の推進が加速されると思われる。
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Causes of Carryover |
想定したよりも書籍を購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入等にあてる。
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[Presentation] 自然突然変異と生命の進化速度2016
Author(s)
坂東昌子, 真鍋勇一郎, 和田隆宏, 角山雄一, 中島裕夫
Organizer
日本物理学会 第71回年次大会(2016年)
Place of Presentation
東北学院大泉キャンパス(宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] Study of biological effects of long-term exposure to low dose-rate radiation with Whack-A-Mole model2015
Author(s)
Takahiro Wada, Yuichiro Manabe, Issei Nakamura, Yuichi Tsunoyama, Hiroo Nakajima, and Masako Bando
Organizer
YITP International Workshop: Biological & Medical Science based on Physics: Radiation and phyiscs, Physics on medical science, Modeling for biological system
Place of Presentation
Panasonic Hall at the Yukawa Memorial Building, Yukawa Institute for Theoretical Physics, Kyoto University(Kyoto, Kyoto)
Year and Date
2015-11-05 – 2015-11-07
Int'l Joint Research
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[Presentation] Challenge to use the Concept, Dose Rate instead of Total Dose2015
Author(s)
Masako Bando, Yuichiro Manabe, Takahiro Wada, Yuichi Tsunoyama, Hiroo Nakajima
Organizer
YITP International Workshop: Biological & Medical Science based on Physics: Radiation and phyiscs, Physics on medical science, Modeling for biological system
Place of Presentation
Panasonic Hall at the Yukawa Memorial Building, Yukawa Institute for Theoretical Physics, Kyoto University(Kyoto, Kyoto)
Year and Date
2015-11-05 – 2015-11-07
Int'l Joint Research
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[Presentation] 突然変異率と生命の進化2015
Author(s)
坂東昌子,真鍋勇一郎,和田隆宏,中島裕夫,角山雄一
Organizer
日本物理学会 2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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[Book] 放射線 必須データ32:被ばく影響の根拠2016
Author(s)
田中司朗 (著, 編集), 角山雄一 (著, 編集), 中島裕夫 (著, 編集), 坂東昌子 (著, 編集), 一瀬昌嗣 (著), 宇野賀津子 (著), 口羽文 (著), 田栗正隆 (著), 竹内文乃 (著), 中村清一 (著), 樋口敏広 (著), 廣田誠子 (著), 松田尚樹 (著), 真鍋勇一郎 (著)
Total Pages
248
Publisher
創元社
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