2015 Fiscal Year Research-status Report
コンタクトレンズの装用はミリ波ばく露誘発眼障害を増悪させるか
Project/Area Number |
15K12209
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
小島 正美 金沢医科大学, 看護学部, 教授 (40183339)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミリ波 / 外眼部対流 / 眼内部対流 / 眼障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.正常有色家兎水晶体上皮細胞の分裂期細胞の出現状態 ミリ波曝露による眼部障害は電波吸収による角膜の直接的な熱障害と角膜で吸収された熱が、房水を介して水晶体に輸送され、水晶体上皮細胞の障害を誘発することが考えられる。本研究は、細胞レベルの詳細な実験となるため、予備実験で正常家兎水晶体上皮細胞の分裂期細胞有無を観察したところ、瞳孔領周辺に多数の分裂期細胞を認めた。文献的には、水晶体周辺部には分裂期細胞は確認されるが、正常な水晶体では瞳孔領周辺には、分裂期細胞は出現しないことが通説である。この結果を実験動物納入会社を介して、ブリーダーに問い合わせたところ、有色家兎はクルーズドコロニーでの生産のため、遺伝性の障害が発生する可能性が報告された。その後、ブリーダーが持つすべての種用♂家兎の水晶体の正常性をブリーダーと金沢医大の共同研究で観察を行った。その結果、一部の種用♂家兎に異常所見を示す個体がおり、その異常家兎の除去を行うことにより、漸く、来年度より細胞レベルの研究を行う準備が整ったところである。
2.家兎外眼部対流実験 高周波のミリ波による眼部曝露では、電波は角膜の表面のみに吸収されるために眼内に輸送される熱の解析と共に、眼外部への熱の放散の状態を可視化し、定量することが望まれる。家兎眼部の形状を3Dスキャナーで記録、解析し、そのデータを基に3Dプリンターで家兎頭部のチャンバーを作成した。このチャンバーを家兎眼部に装着した状態で、76 GHzのミリ波(自動車衝突防止システムで採用され、日常生活での被曝が予測される)を曝露した際の眼外部の熱の対流の変化を532 nm緑色レーザーで、眼表面の断面を可視化し、電波曝露有無による眼外部での熱輸送の変化を捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
正常であるべき実験動物の水晶体上皮細胞に異常があることが判明した。有色家兎(ダッチ種)はクローズドコロニーでの生産のため、種♂家兎に異常があり、それが原因で遺伝性の初期白内障が生じていたと考えれる。当実験動物生産者は動物の出荷時には、外見的には正常性のチェックはなされているが、顕微鏡レベルでのチェックがなされていなかったのが原因である。動物供給会社を変えることも考慮したが、実験動物として供給されているダッチ種は何れの会社でもクローズドコロニーでの生産のため、同様の結果になることが容易に推察される。 以上より、原因である異常種ウサギの排除が最も簡便で効果的であると判断し、異常実験動物の除去を行うスクリーニング実験を優先したため、本来予定していた実験の進捗状況に若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.コンタクトレンズ装用の有無によるミリ波曝露での眼障害発症の有無の検討 細胞レベルでの正常が確認された家兎にコンタクトレンズの装用有無の状態で、ミリ波を曝露し、眼障害発現の有無を細胞レベルで検討する。また、コンタクトレンズの種類による障害程度の相違、眼部温度上昇の変化等を測定する。 2.コンタクトレンズ装用有無による眼内熱輸送の相違 温度変化により色調が変化する粒子を前房内に手術的に注入後、ミリ波を曝露し、眼内での熱輸送の状態をコンタクトレンズの装用の有無で比較検討する。 3.コンタクトレンズ装用有無による眼外熱輸送の相違 実験2と同様の実験を行い、眼外部での熱の輸送を今年度に開発した眼部チャンバーを使用して、眼外部での熱の蒸散を可視化し、できれば定量を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、実験動物を使用したコンタクトレンズ装用の有無によるミリ波曝露での眼障害の検討をする予定であったが、正常であるべき実験動物に水晶体の異常が認められ、予定していた家兎での実験が出来なかったことが最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、動物供給会社との共同研究により、繁殖用の種♂家兎の水晶体スクリーニングを行ったことにより、次年度より、細胞レベルでも正常な実験動物が供給されるので、今年度に予定していた家兎の実験を行う。
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Research Products
(2 results)