2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12211
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横谷 明徳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主席 (10354987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 壽崇 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70339745)
鵜飼 正敏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80192508)
渡辺 立子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10360439)
芳賀 芳範 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90354901)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハロゲン置換DNA / DNA損傷 / ESR / シンクロトロン放射光 / アンテナ分子 / 不対電子種 / ラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、ハロゲン原子による放射線増感効果の新奇なメカニズムとして、“分子アンテナ”の存在を予測している。本研究ではこの仮説を、実験と理論の両面から実証し、どのようなメカニズムで分子アンテナが周囲のラジカルや二次電子を効率よく捕集するのかを理解することを目的とする。そのために、本年度は、ESR法によりBr以外のハロゲン(F、Cl、I)やニトロ基など、様々な官能基を有するウラシルに対してESRを試み、官能基のどのような性質に対してラジカル抑制効果が観測されるかを評価した。 実験には、高輝度放射光施(SPring-8)の軟X線ビームライン(BL23SU)に設置されたESR装置を用いた。試料として、F,Cl,I を官能基に持つウラシルを真空中で蒸着した薄膜を作成して用いた。この試料薄膜に対し、窒素及び酸素のK吸収端領域の軟X線を、ESR装置のキャビティー中でエネルギーを掃引しながら照射し、ESR測定を行った。その結果、Br原子の場合と同様に、ハロゲン置換していない通常のウラシルと比べ、不対電子収量が大きく減少する結果が得られた。このことから、ハロゲン元素がピリミジン環に対して大きな電子吸引性を持ち、これによりESRで観測されるラジカル生成が現象することが推測された。これらの結果を国際会議で発表し、専門家とハロゲン含有DNA分子の電子物性に関する討議を行い、次年度のハロゲンDNAに対する分光実験と新しいアンテナ分子のデザインを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハロゲン置換DNA関連分子に対するESR測定など、当初予定されいた実験は順調に進展し、得られた成果を国際会議で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定通り、ハロゲン置換DNAの電子物性を明らかにするための電子分光・吸収測定等を実施するとともに、当初予定にはないカロリーメトリー法を用いた試料の電子状態観測を試みる。さらにモンテカルロ法によるハロゲン原子周辺でのDNA損傷分布の計算を実施する。
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Causes of Carryover |
SPring-8における本テーマの実験のためのビームタイムに3名出張する予定が、諸事情により2名で実施した。また本年度購入予定の試薬類について、既存の試薬を活用することができた。さらに、当初購入予定していたワークステーションが、次年度により高性能の機種が販売される見込みのため、購入を延期したことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ワークステーションや試薬類など、当初の計画通りに購入をすする予定である。またビームタイム出張を、次年度は予定通り3名で実施する。
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Research Products
(3 results)