2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K12217
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
伊豆田 猛 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20212946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50612256)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オゾン / 樹種間差異 / 感受性 / 光合成 / オゾン吸収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、短期オゾン暴露実験のシステム作成を行った。本システムはオゾン暴露と葉の純光合成速度および蒸散速度の測定を同時に行える装置であり、ガスポンプ、マスフローコントローラー、オゾン発生器、葉を収納するアクリルチャンバー、CO2/H2Oモニターおよびオゾンモニター等からなるエアーフロー系と、光合成を行うための光源およびチャンバー冷却装置等からなる環境制御系によって構成される。エアーフロー系については、測定を行うための最適な各機器の配置・接続を検討するとともに、オゾン濃度の調整に適した接続チューブの選定等を行った。環境調節系のうち、光源に関していくつかの種類を試した結果、光照射に伴うチャンバーの高温化を極力抑えるために、クロロフィルの吸収波長帯である赤色(665 nm)と青色(470 nm)のLEDランプを搭載した人工光源を用いることとした。また、チャンバーの温度制御については、当初ペルチェクーラーによる制御を行ったが、安定した制御が困難であり、かつ結露の問題が生じたため、スポットクーラーによって制御することとした。 オゾン暴露装置の作成後、モデル植物としてコマツナを用いた試験測定を行った。まず、オゾンを暴露しない条件において、コマツナの純光合成速度を測定したところ、8時間以上にわたって安定した値を示した。さらに、高濃度(800 ppb)のオゾンを暴露しながら純光合成速度を測定したところ、暴露開始から約1時間で純光合成速度の低下が始まり、約2時間後には純光合成速度が暴露前の半分以下になった。以上の結果から、本装置のガス交換速度の測定環境自体は植物の葉の光合成活性に対して負の影響を引き起こさないこと、1~2時間といった短期オゾン暴露によって植物の光合成速度の低下が引き起こされることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オゾン暴露装置のエアーフロー系におけるオゾン濃度の減衰や環境制御系におけるチャンバーの高温化などが当初の想定以上に深刻であったが、資材および機材の変更や流量の調整等によって実際の葉における測定が可能な段階まで進めることができた。また、オゾン暴露実験に関する先行研究の情報整備を行ったことにより、次年度(平成28年度)の長期オゾン暴露実験をスムーズに開始する基礎を築くことができた。したがって、全体として「研究はおおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に行った文献調査から得られた情報に基づいて選定された落葉広葉樹のブナ(オゾン感受性高)とコナラ(オゾン感受性低)、常緑広葉樹のスダジイ(オゾン感受性高)とシラカシ(オゾン感受性低)を対象に暴露チャンバーを用いた長期オゾン暴露実験を行う。育成期間中に苗木の成長や光合成に関する継続調査を行い、育成終了時(10月)に苗木の器官別乾重量と葉面積を測定する。それらの結果に基づき、オゾンの影響程度を評価する。さらに、平成27年度に作成した短期オゾン暴露装置を用いて、個葉におけるオゾン感受性評価を同樹種において行い、長期暴露実験との比較検討を行う。 平成27年度および28年度に得られた成果を学会発表し、さらに原著論文を執筆し、国際学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度においては国内学会で成果を発表する予定であったが、他の学会行事などと重なり、参加できなかったため、旅費を使用できず、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、物品費または旅費として使用する予定である。
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