2015 Fiscal Year Research-status Report
深海トレーサー散布実験で海底資源開発の影響がおよぶ範囲を評価する
Project/Area Number |
15K12222
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
川口 慎介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (50553088)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 影響評価取法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦は世界6位の排他的経済水域を有する。そこには膨大な海底資源が存在するとされており,「海底資源大国」となることが期待されている。しかし深海底という特殊な環境から,開発にあたって必須となる環境影響評価の方法論が(国際的にも)いまだ確立されておらず,開発計画が進まない一因となっている。本研究では,評価の前提要素である「対象範囲」を限定するために「深海の海流」を調べることを提案し,その手法確立を目指す。はじめに,トレーサーとして用いる六フッ化硫黄(SF6)の海水中溶存濃度を迅速・簡便に分析するため,新たに試料処理法およびガスクロマトグラフ法の確立を目指した。トレーサー散布時のバックグラウンドレベルを把握するためニスキン採水器に採水した試料を120mLバイアル瓶へと移しブチルゴム栓で密閉した後アルミシールで固定し持ち帰った。実験室においてバイアル瓶に充填した水の一部をSF6を含まない高純度ヘリウム20mLで置換し,瓶を激しく振ることで瓶内の気相・液相間でSF6を平衡に至らせしめた。この気相をガスタイトシリンジで採取し,ポラパックカラムで他分子と分離した後に電子捕獲型検出器を用いて検出した。この定量法について,繰り返し精度および導入量とピークエリアの直線性を試験した。今後は性能を従来用いられているパージアンドトラップ法と比較し,簡便さを保ったまま高感度化を目指す。また深海の高圧に対応できるトレーサー散布容器を製作するための検討をおこなった。海底開発のトレーサーとして利用するためには液化ガスを散布容器に移す必要があるが,液化ガスを深海対応容器に移す行為は高圧ガスに関わる諸規定による制約がある。現在は各種規定の精読と対応可能な容器設計について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
液化ガスを深海対応容器に移す行為は高圧ガスに関わる諸規定による制約があり,これに抵触せず効率的かつ科学的に有益な成果をえるための手法の検討に時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
高圧ガス業者や高圧ガス配管業者と技術的な検討を進める。分析法について従来法(パージアンドトラップ法)のパージ部は簡素化のために省略しヘッドスペース法で代用しつつ,トラップ部は高感度化のため採用する「ヘッドスペースアンドトラップ法」として確立を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は実験装置・海洋観測に必要な消耗品を購入した上で,実験および航海調査を実施した。この結果を受け取法確立にフィードバックし次年度に装置の改良や別航海調査を実施するよう変更したため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析法の検討・改良を実施する際に必要な物品購入およびトレーサー散布およびモニタリングのための航海調査に趣く旅費に使用する。
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