2016 Fiscal Year Research-status Report
微生物機能を利用した廃水からのアンチモン除去技術の基礎開発
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15K12230
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
惣田 訓 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30322176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 真史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20511786)
池 道彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40222856)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アンチモン / 微生物機能 / 還元 / 資源回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、100mg-Sb/Lのアンチモン(Sb)と2 mMの乳酸(炭素源)を含む無機塩培地で十三干潟の底泥に由来するアンチモン除去微生物の集積を継続した。培養液中の16S-rRNA遺伝子をPCRで増幅し、HhaIで消化してT-RFLP法により、微生物群集構造を解析した。400日以上に渡って集積を継続したところ、高いSb除去率が得られた。Sb除去率が安定した培養系からはT-RFが10個以上検出され、多様な微生物の存在が明らかとなった。沈殿物中のSbとSの空間分布は一致し、その比率(Sb:S)は約2: 3であった。培地中のSb濃度を基準値より少なくした場合でも高いSb除去率が得られたが、2倍の濃度では除去率は低下した。S濃度を変化させるとSb除去率が低下した。このことから、SbとSのバランスが沈殿形成に影響を与えると考えられた。また、乳酸濃度を減少させるとSb除去率が低下した。 また、一般的な微生物が生息する土壌や環境水中が有する水溶性Sbの除去能力の評価をした。兵庫県内の里山から土壌や環境水試料1~8を採取した。膜分離(MBR)活性汚泥から試料9を、回分式活性汚泥から試料10を採取した。試料1、2、3、8において10日目頃から橙色の沈殿物の形成が確認され、29日目には99%以上の溶存Sbが除去された。試料4、5、6、7においても溶存Sb濃度が減少したが、橙色沈殿物の顕著の形成は観察されなかった。また、酸化アンチモンに特有の白色沈殿物も生じなかったことから、微生物細胞への吸着によって水溶性Sbが減少したと考えられる。試料9では7日目に橙色沈殿物の形成および溶存Sb濃度の減少がみられ、9日目には除去率が70%に達した。一方で試料10では沈殿物の形成や溶存Sb濃度の変化は見られなかった。回分式活性汚泥に比べ、MBR活性汚泥は滞留時間が長いことから、微生物相が多様であり、水溶性Sbの除去に関わる微生物も多く存在していたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
河川の底質からアンチモンの還元・除去微生物の集積に成功している。炭素源量と硫黄源量の及ぼすアンチモン除去への影響も評価できており、排水処理への応用へ向けた期待も高まった。ただし、予期していた以上に微生物群集が多様であり、アンチモン還元菌の単離と特徴づけに時間を費やしている。 また、一般的な微生物が生息する土壌や環境水中が有する水溶性Sbの除去能力も評価できた。第51回日本水環境学会年会で発表した成果は、発表した大学院生が年会優秀発表賞(クリタ賞)を受賞し、高く評価されている。
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Strategy for Future Research Activity |
アンチモン還元菌の単離と特徴づけを優先して実行する。また、アンチモンが5価から3価に還元される証拠として化学分析を精密化する必要があり、抽出法やICP-MSによる分析を試みる。
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