2015 Fiscal Year Research-status Report
光化学的手法を用いた水中からのレニウム成分の完全回収システムの開発
Project/Area Number |
15K12248
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | レニウム / レアメタル / リサイクル / アセトン / 沈殿 / 過レニウム酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
レアメタルの中で地殻存在量が最も少ないレニウムは高融点、高強度等の優れた性質を持つ。このため航空機エンジンや火力発電用のタービン、石油改質用の触媒等に使用されている。レニウムは主に輝水鉛鉱(モリブデンの鉱石)の焙焼ガス中の酸化レニウム(VII)を過レニウム酸イオン(ReO4-)として水中に捕集し、アンモニア水を添加後、再結晶やイオン交換樹脂、溶媒抽出等で回収し、水素還元することにより製造されている。しかし従来の方法は回収率が低く(40-60%)、高窒素濃度の排水が発生する等の問題がある。この状況は二次原料(廃棄物)を用いた場合も変わらない。このため水中からReO4-を簡易かつ高効率に回収できる新しい方法の開発が望まれている。 本研究では水中のReO4-を光励起し、電子供与剤からの電子移動反応を起こしてReO3として沈殿分離するスキームを想定して実験を行った。その結果、電子供与剤として2-プロパノールを用い、さらに反応系にあらかじめアセトンを加えることで、光照射6時間で高効率(~95%)に水中のレニウム成分を沈殿として分離回収することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来法では困難であった水中からのレニウム成分の高効率な回収をほぼ完全に達成できた。この方法は従来法のように高窒素濃度等の環境負荷が高い排水が発生する懸念もない。その成果は国際的に著名な学術誌に掲載され、特許も出願し、企業との共同研究も開始予定である。また、プレス発表を行ったところ日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報、神奈川新聞、レアメタルニュース、さらにはTBSテレビ「未来の起源」で紹介されるなど大きな反響あった。以上の事情から当初の計画以上に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
水中のReO4-の回収において、共存物質の影響について調べる。特に廃棄合金等に含まれている他の金属成分との混合水からレニウム成分を選択的に沈殿分離して回収できるかどうか調べる。
|
Causes of Carryover |
光化学実験ではガラス製反応セルやランプ、フィルター類の劣化や破損、さらには過レニウム酸イオン分析用のイオンクロマトグラフィーにおけるカラムの劣化を想定していたが、まだ使用に耐えうる状況であること、金属成分分析の外注を予定していたが、自前でも一部可能になったことが原因である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に請求する予定の100万円と27年度繰越した37万円の合計額137万円の使用内訳は物品費67万円、旅費20万円、依頼分析費用40万円、英文校閲10万円を予定している。物品費は試薬・ガス類、光化学用実験器具類、分析用消耗品(イオンクロマトカラム等)である。
|