2015 Fiscal Year Research-status Report
可能な限り薬剤を使用しないコラーゲン抽出手法のベストミックスを探る
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15K12249
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑原 順子 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (40289351)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コラーゲン / 三重らせん構造 / 魚鱗 / ゼラチン / シリウスレッド法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ティラピア鱗を原料とし抽出条件の検討を行った。ティラピア鱗は皮と比べて組織が硬いため、ボールミル法、液体窒素による凍結破砕法では鱗組織を破砕することはできなかった。そこで、希酢酸溶液に浸漬後、加熱による抽出を行ったところ変性温度付近より高い40℃付近で6時間程度加熱するとコラーゲンの抽出率は向上した。しかしながら、それ以上の加熱時間ではコラーゲン鎖の低分子化がSDS-PAGEにより確認された。また、80℃では2時間以内にコラーゲン鎖の低分子化と変性によるゼラチン化が円偏光二色(CD)スペクトルより確認された。SDS-PAGEの結果より、ゼラチン化させずにコラーゲンの構成鎖であるα鎖、β鎖として抽出するには、変性温度付近の40℃による抽出法が最も効果的であり、CDスペクトルパターンからコラーゲン特有の三重らせん構造を形成することが明らかとなった。しかしながら、収率は0.3%となり、一般的な鱗の収率である2%を下回った。収率が低下した理由として、今回、シリウスレッド法で定量を行ったが、シリウスレッド色素のスルホン酸基に対して溶出カルシウムイオンが優先的に吸着したため、結果としてコラーゲンの収率が相対的に低下したと考察された。カルシウムを多く含む鱗はシリウスレッド法の試料としては不適であると結論づけられた。また、脱臭については特定のガスによる処理により1時間でほぼ無臭にすることができた。なお、申請時の計画で記載した抽出条件の検討については現在、特許出願準備中のため詳細については公開できない。次年度にまとめて報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硬い鱗の破砕法の検討に時間を要したのと、原料が鱗だった故に溶出コラーゲンの定量法に課題が残った。 しかし、抽出温度条件、溶液の条件など、収率及び純度が最大となるパラメータをそれぞれ確定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、原料の鱗を機械的に破砕できなかった手法を見直し、次年度は酵素法ならびに紫外線照射によるコラーゲンの架橋部位の分解を狙って実験を進める予定である。コラーゲンの架橋はピリジノリン骨格で形成されており、ピリジノリンを優先的に分解する酵素、または紫外線照射によって収率の向上を図る。なお、コラーゲンの定量はシリウスレッド法にカルシウムキレート剤を加え改良したシリウスレッド法で試みる予定である。抽出試料の純度については、引き続きSDS-PAGEでのコラーゲン鎖の有無を確認する。また、抽出過程および物理的刺激によるコラーゲン架橋構造の作用機序については、CDスペクトルや蛍光測定などの分光学手法を主に使用しながら、解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
使用予定の試薬の納期が期限までに間に合いそうになかったため、次年度に購入することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の早くに試薬は納品されるため、問題なく実験は遂行できる。
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