2015 Fiscal Year Research-status Report
生活の質を考慮した生態系サービスの評価方法に関する学際研究
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15K12257
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 真行 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10437254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
片桐 恵子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80591742)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 都市生態系 / 生態系サービス / 生活の質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、六甲山系の生態系を調査対象フィールドとし、(1)生態学的研究によって当該地域の生態系の実態調査、(2)経済学的枠組に基づく生態系サービス評価、そして(3)心理学的枠組にもとづく生態系サービス評価を通じて、生態学・経済学・心理学を統合するようなあらたな包括的な生態系サービス評価手法を開発に取り組んだ。平成27年度は、生態系サービスの供給源として、当該フィールドの森林・緑地の生態系に焦点を当て、自然環境データの収集や解析を行い、GISを通じて社会心理データと結合させ、統合的な分析を行った。 本地域に残存する自然・人工地のタイプと分布を可視化するために、六甲山およびその南・南東に広がる大都市部(神戸、芦屋、西宮、尼崎市)と北・北東の農村部(神戸市北区、三田、西宮市、宝塚市)の植生図と土地利用図を用いて独自に地図情報化した。これにあわせて、土地利用の変化があたえる生態系への影響を分析した。こうした都市化が与える生態系への影響については学会発表などを通じて成果を発信しながら、データベースを拡充した。 また、社会心理分析として、当該フィールドにおける経済・心理学的調査から生活満足度や精神的健全性のデータを自然生態系データに統合し、両者の関係を分析した。これらの分析も学会発表で成果を発信した。 本研究は、経済学、生態学、心理学の融合的研究として、それぞれの学会で発表し、生態系サービス評価手法としてのオリジナリティや有効性が評価された。平成27年中の成果は英文学術論文としてまとめ、現在査読付き雑誌に投稿し審査中であり、平成28年度にはそれら成果も実績として現れてくると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、従来の経済学的生態系サービス指標を批判的に検証し、近年の心理学的成果を取り入れた枠組みに展開しつつ、当該調査フィールドにおいて自然生態系データの収集も順調に進展しており、初年度として、経済学、生態学、心理学を融合させた分析の初期結果を提示し、学会等でそれぞれの分野の専門家からも斬新性と有用性が認められた。平成27年度は、森林・緑地を主たる調査分析対象としたが、順調に進展したため今後は水域についても対象とできるように推進方策を前向きに再検討された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ概ね順調に進展していることから、当初の計画に沿って推進する。平成28年度は、当該調査フィールドのデータをさらに拡充する。具体的には生態系データとして森林・緑地の属性別分類や生物多様性に関する情報をデータベースに取り入れるとともに、水域生態系データへと広げる。特に、都市化による生態系への影響を可視化し、環境経済学的評価ならびに生活の質の評価のためのアンケート調査の基礎となる自然科学的知見を提出する。一方で、社会心理データについては新生態系パラダイム(New Ecological Paradigm)の観点を取り入れた調査票を設計し、可能な限り回答者の居住環境や生活環境を取り入れた社会調査を実施し、データベースに統合する。そして自然生態系データと社会心理データを合わせて分析することで、自然生態系と社会経済の相互依存・相互作用についての総合的理解に基づく生態系サービス評価を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に計画していた社会調査票作成についてアルバイトを雇用せずに済み、一部を旅費その他研究の推進に使用したが残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施する社会調査を拡充して使用する。
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Research Products
(9 results)